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zoom RSS F=ディースカウのシューマン「詩人の恋」

<<   作成日時 : 2007/05/10 21:26   >>

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シューマンの連作歌曲集「詩人の恋」は、第1曲「うるわしくも美しい5月に」で始まる。それでちょうど今の季節にいいのではないかと思い、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)、クリストフ・エッシェンバッハ(ピアノ)の演奏を聴いてみた。録音は1974年1、4月である。

連作歌曲集というとシューベルトの3大歌曲集「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」が有名だが、ぼくはこのシューマン「詩人の恋」全16曲がシューベルトの3大歌曲集と同等かそれ以上に好きでいる。「詩人の恋」は、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」と同様、若い青年の恋愛とその悲劇的な結末をテーマにしたものだけど、シューベルトと比べその感情表現はより深く、濃く、そして不安定になっている。
第1曲は美しい5月を背景しながらも、すでに恋が悲劇を終わることを暗示させる曲調になっている。第5曲あたりから感情表現は濃厚になっていく。第8曲「花が、小さな花が分かってくれるなら」で歌が終わった後のピアノ伴奏が印象的だ。続く第9曲「あれはフルートとヴァイオリンのひびきだ」はシューマンらしい奇妙なピアノ伴奏に乗って歌われる絶妙の曲だ。全16曲の中の白眉ではないだろうか。第12曲あたりから感情の沈潜が深くなり、最後の第16曲ではこの恋の物語を振り返る内容になっている。


F=ディースカウは声が美しいだけでなく、真に心をこめて歌ったもので本当に素晴らしい。彼の1970年代のDGへの録音は、特にシューベルトではぼくには演技過剰に感じられることもあるが、このシューマンの演奏は曲と主人公である若者の心情への共感に感じられるすばらしいものだ。
そしてそれと同じくらいすばらしいのが、エッシェンバッハのピアノ伴奏だ。時には繊細に、時には力強く、ピアノ伴奏の作曲の妙が「詩人の恋」が名曲たらしめていることを示している。エッシェンバッハは今ではもっぱら(?)指揮者として活躍中だが、ピアニストとしても非常にすぐれた感性の持ち主だと思う。ちょっと余談になるが、ぼくは、彼が1960年代にDGの録音したモーツァルトのピアノ・ソナタ全集を今でも時々聴いている。

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
アルトゥールさま
この度は、思いがけずもTBして頂きましてありがとうございます。

本当にこの季節になるとあの「美しいたえなる五月」の旋律が胸にしみてきます。喜びと怖れ、激しさと静謐とが、ないまぜとなった「詩人の恋」。

実は先日、ナタリー・シュトゥッツマンで聴いてみました。
すばらしいCDなのでしょうが、この歌はやはり男性に歌ってほしいと思います。フィッシャー・ディースカウの歌うこの歌曲集を、実はまだきいておりませんが、これを気に聴いてみたいと思います。
エッシェンバッハのピアノも懐かしいです。
aosta
2007/05/28 06:36
aostaさん、コメントありがとうございます。
またTBさせて頂きましてありがとうございました。

私も5月になると「詩人の恋」を思い出します。実は
この曲、それもF=ディースカウの歌唱が自分が若か
った頃(もう四半世紀近くも前のことです)の思い出
とそのまま結びついているんですよ。
シュトゥッツマン盤は私も持っています。私は彼女の
歌唱は好きですが、仰るとおりこの歌ばかりは男性で
ないと…。

話が変わりますが、最近aostaさんが以前書かれていた
福永武彦「草の花」を買いました。私は日本の戦後文
学でまともに読んだのは三島由紀夫くらいで、福永さ
んの小説は1冊も読んだことがありませんでした。読
むのを楽しみにしています。
アルトゥール
2007/05/28 09:34
アルトゥールさま

すっかりご無沙汰しておりましたので、もしかしたらもう覚えていて下さらないかしら、と恐る恐るのコメント↑でした。

プレガルディエンのテノール大好きなんです。
彼のリリカルな明るい声と、歌われる歌の内容との落差が、この「詩人の恋」をより深いものにしているような気がしています。

福永武彦の本の中にはシベリウスの音楽が印象的に用いられています。
福永の文章にシベリウスの音楽が重層的に重なって、主人公の内的世界を音楽が語るような雰囲気があります。
なかなか読み直す機会もないままにきてしまいましたが、今読んででみたら10代のころとはかなり違った感想を持つのではないかと思います。

またお邪魔させていただきますので、よろしくお願いいたします。

aosta
2007/05/28 09:51
 アルトゥールさん、こんにちは。
 aostaさんもいらっしゃるので、びっくりしてしまいました。いつもお世話になっています。
 今、寝る前など、アルトゥールさんに教えていただいた、ピリスのショパンと、エッシェンバッハのモーツァルトばかり聴いています。
(これについては、またあらためて書かせていただきます)
 そろそろ、シューマンかな、と思っていたのですが、お二人の記事があまりにも魅力的なので、ついに、シューマンの歌曲を聴いてみることにしました。
 とりあえず、aostaさんのコメントにある、ブレガルディエン??あたりからいこうかと。
 また、ご報告させていただきます。
Nora
2007/05/28 16:26
 ちょっと修正です。ごめんなさい。
 アルトゥールさんにご推薦いただいたピリスのCDは、シューベルト他でした。ごちゃごちゃになってしまった・・・・。
 ピリスのショパンというのは、プレリュード集を借りに、図書館に行ったところ、唯一あったものです。
 古い録音なのですが、すっかり気にいったので思わず書いてしまいました。もっとも、他の録音は、まだまったく知りませんが。(笑)
Nora
2007/05/28 17:37
aosta様
私の世代はドイツ歌曲というと、一にF=ディースカウ、二、三
がなくて四、五がプライ、シュライアーという時代でした。
ブレガルディエン(宗教曲で聞いたくらいです)とかゲルネなど
最近の歌手はほとんど知らないのです。リリカルな明るい声とい
うとシュライアーに近いのではないかと思います。「詩人の恋」
はテノールの方が曲に合っているように思いますので、こんど
CD店に行ったら探してみます。

福永武彦「草の花」は少し読んだのですが、サナトリウムでの
話のようですね。その感性には同感できるものを感じました。
引き続き読み進みます。







アルトゥール
2007/05/28 21:15
Nora様
お聴きになっているピリスのショパンというと「前奏曲」
でしょうか。私はピリスの前奏曲は聞いたことがないので
すが、彼女が90年代後半にDGに録音した「夜想曲」が
つぶらな音と心のこもった演奏で、大変な名演だと思って
います。

エッシェンバッハの若い頃のモーツァルトは、なかなかだ
と思います。私は一見(実際にも?)単純なモーツァルト
のピアノソナタは昔から好きです。こんな簡単な曲が何回
聞いてもなぜ飽きないのか、本当に不思議です。
余談ですがエッシェンバッハという人は、今はすっかり禿
げてしまいましたが、若い頃はけっこうイケメンだったん
ですよ。
アルトゥール
2007/05/28 21:27
 おはようございます。
 ピリスのショパンは、前奏曲で、すごく古い録音のようです。
 例の25番も入ってますが、これもなかなかです。

 エッシェンバッハのモーツァルトは他の人に比べて、ものすごくしなやかな感じがします。こんなピアノを弾く人だとは、思ってもいませんでした。
Nora
2007/05/29 11:18
Noraさん、おはようございます。
コメント有難うございました。

ピリスのショパン「前奏曲」はエラート時代のものですね。
ピリスはエラート時代と最近とで演奏スタイルがだいぶ変わった
ように思いますが、エラート時代の彼女(もっともショパンは聞
いていないので偉そうな事は言えませんが)のフレッシュな演奏
も魅力にあふれたものだったと思います。

エッシェンバッハのモーツァルトは、仰るとおりしなやかな演奏
と若々しい感性の感じられる良い演奏だと思います。またギーゼ
キングのモーツァルトは畏れ多くて度々聴く気になれないのです
が、エッシェンバッハとかピリス旧盤は気軽に聴けるように感じ
ています。ただエッシェンバッハがピアニストとして認知されて
いた70年代頃は、私もあまり知らないのですが、アシュケナー
ジ、ポリーニ、アルゲリッチと個性が強く演奏技術も卓越したピ
アニストが人気を集めた時代で、エッシェンバッハは彼らの影に
隠れ今一つ注目されなかったように聞いています。
アルトゥール
2007/05/30 07:44
 アルトゥールさん、こんにちは。またまたこんなところですみません。
 ピリスのCD、(ノクターン集と、シューベルトの即興曲+3つの小品)
 図書館の順番がやっと回ってきて、(意外と人気なのです)ようやく聴くことができました。
 美しい響きに深い陰影も兼ね備えた、すばらしい演奏でした。教えていただき、ほんとうにありがとうござす。
 でも、おしゃるように、前奏曲のさわやかな感じも捨てがたい気もします。
 この人は、すごい人ですね。
Nora
2007/06/14 14:05
 続きです。
 さて、今後はいよいよ、シューマンのピアノ曲、歌曲に進んでいこうかと・・・・。
 あと、シューベルトの歌曲、ブラームスの室内楽などでしょうか。
 引き続きよろしくお願いします。
Nora
2007/06/14 14:10
Noraさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ピリスのDGへの録音は、ショパンのノクターンとシューベルトの
即興曲が特にすばらしいと思います。気に入っていただけて大変嬉
しいです。

シューマンのピアノ曲、歌曲は、鋭敏な感受性と情熱と、どこかし
らの狂気が感じられます。ピアノ曲ですと、私は「ピアノ協奏曲」
「交響的練習曲」「クライスレリアーナ」「幻想曲」「ピアノ・ソ
ナタ3番」などを好んでいます。
ブラームスの室内楽は、晩年のクラリネットを使った4曲に本当に
独自の魅力がありますが、ヴァイオリン・ソナタなど有名曲も聴け
ば聴くほど味わいの出てくる良い曲だと思います。
アルトゥール
2007/06/14 20:09
エッシェンバッハとディスカウで冬の旅のレコードも同じころ出ていたと思うのですが、(全曲ではなかったと思います)とっても好きな盤だったのに、何度も引越しをしている間に失ってしまいました。だいぶ前からネットで探しまくっているんですけど、出てきません。もしかして、このレコードの詳細をご存知だったら教えていただけませんか?初めてドイツリートに接して心を打たれた盤なので。
ももうめさくら
2016/11/24 02:31
ももうめさくら様

レスが遅れ申し訳ありません。

ディースカウとエッシェンバッハの「冬の旅」の録音があったというのは、存じませんでした。ディースカウは、「冬の旅」をムーア、デムスといわゆる伴奏ピアニストと録音した後、バレンボイム、ブレンデル、ペアイアとソリストと録音し、最近ポリーニとの共演が発掘されたと聞いていますが、エッシェンバッハとの「冬の旅」は残っていないように思います。
アルトゥール
2016/12/19 18:54

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