クラシック音楽のある毎日

アクセスカウンタ

zoom RSS チェリビダッケのブルックナー「交響曲第5番」

<<   作成日時 : 2007/08/14 22:15   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 6

画像


ブルックナーの最高傑作はどの曲でしょうか。モーツァルトやベートーヴェンの最高傑作というと人によっていろいろと意見が分かれると思いますが(余談ですがぼくは今、モーツァルトの一番好きな曲は「13管楽器のためのセレナードK361」、ベートーヴェンの一番好きな曲は「ディアベッリのための変奏曲」でいます)、ブルックナーの最高傑作というと多くの人が第8交響曲か第9交響曲を挙げるのではないでしょうか。ぼく自身は第9が一番好きですが、セルジュ・チェリビダッケは第8交響曲をブルックナーの最高傑作、いやブルックナーに限らず古今すべての交響曲の最高傑作だと述べていたそうです。これは彼が第9が未完の作品であることを考慮したせいかもしれませんし、第9よりも第8の方が上だと考えているせいかもしれません。
ところが最近、第5交響曲をブルックナーの最高傑作であると考える人が増えてきたように思うのです。現にあの朝比奈隆先生は、第5を最も好まれていたと聞きます。

ところでブルックナーの交響曲から響いてくるものは何でしょうか。オーストリア・アルプスの豊かな大自然の風の音、川のざわめき、鳥の声、澄んだ空気、そのようなものかもしれません。しかしだんだん聴き進めていくと大宇宙の中に入り込んだような感に囚われてきます。大宇宙の息吹をそのまま聞いているような気持ちになるのです。

ぼくはブログ仲間のNoraさんの記事にヒントを得て、ブルックナーの交響曲が一見どれも同じに聞こえること、彼が創作活動を中断することがなく、いったんある作品が完成してもすぐに、それも次の構想を確立することなく創作活動に取りかかったこと、さらにシャルクやレーヴェの助言があったとはいえいったん完成したはずの作品を改作し続けたことから、彼のすべての交響曲を個々の独立した作品と見るべきではなく、宗教曲なども含め彼は生涯をかけて1つの作品を創作し続けたと理解したほうが、ブルックナー音楽の本質を把握したことになるのではないか、と考えています。もちろんブルックナー自身にそのような意識はなかったわけですが。このように考えると、ブルックナーの創作活動は永遠に終わることのないものであり、逆に未完の第9交響曲は完成作だともいえることになります。

しかしこのようなブルックナーの生涯を通じての創作活動も、その年月に応じて変化していきます。そうして初期には彼の身近だったアルプスの自然から、晩年になるにしたがってだんだん大宇宙を描くものに変化していったと考えたいのです。もちろんある時点で突然地球から宇宙に変化するわけではありません。彼の作品に徐々に宇宙的要素が現れてくるのです。しかし大自然を描いた作品の頂点が第5で、第6は過渡期の作品、第7以降は完全に大宇宙に足を踏み入れた作品だといえるのではないでしょうか。第5交響曲はいわば地球時代の最高傑作であり、これをブルックナーの最高傑作と考える人が多いのもうなづけるのです。

ところで今日聴いた演奏はチェリビダッケが1981年11月26日にシュトゥットガルト放送交響楽団を指揮したのをDGが復刻したものです。この演奏はたいへんゆっくりしたものです。演奏時間は83分を超え、CD2枚にまたがっています。第5がCD1枚に収まりきらないというのはチェリビダッケだけではないでしょうか(ちなみにぼくは彼がミュンヘン・フィルを振ったEMI盤も持っていますが、各楽章ともさらに1分ずつほど遅くなっています)。
しかし演奏はたいへん説得力の強いものです。演奏が遅いと感じさせないのです。磨き抜かれた音、アンサンブルはたいへん精緻で、オーケストラがまるで1個の楽器のようです。チェリビダッケが「オーケストラ」という1個の楽器を演奏しているようなのです。しかも地球時代の最高傑作と思われる第5にすでに宇宙的要素が入り込んでいることを如実に感じさせるものです。第2楽章アダージョにそれはすでに感じられますし、終楽章の最後部分はまるで大宇宙の鼓動が鳴り響いているようです。チェリビダッケならではの至芸といえるでしょう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ブルックナーの交響曲第5番 チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送響
やや気温が上昇して、久しぶりの雨です。 寒波が緩んでの雨なので、春の雨のよう・・・・・まだ少し早いかな。 職場の梅の花のつぼみ、開花にはもう少し時間がかかりそうです。 ...続きを見る
クラシック音楽のひとりごと
2007/08/16 09:06

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
アルトゥールさん、こんばんは!
「最高傑作=最も好きな曲」、或いは「最も好きな演奏=最も頻繁に聞く録音」とはなりませんが、ブルックナーの交響曲では第5が最も好きです。
また、チェリビダッケのミュンヘン時代の偉業に大変感銘を受けつつも(リスボンでの第8など)、個人的には音を磨きに磨いたシュトゥットガルト時代を好んでいます。
凛虞
URL
2007/08/14 23:12
凛虞さん、コメントありがとうございます!
確かに「最高傑作=最も好きな曲」ではないですね。拙記事は
その点を混同している個所があるかもしれません。ただし朝比
奈さんクラスになるとその一番お好きな曲を最高傑作と考えて
おられたと考えていいと思うんですよ。ただし私自身の「モー
ツァルト、ベートーヴェンの最高傑作」のところを「一番好き
な曲」に直しておきました(汗)。
チェリビダッケは凛虞さん同様、ミュンヘン時代に感銘を受け
つつも、どちらかといえばシュトゥットガルト時代の方を好ん
でいます。
アルトゥール
2007/08/15 09:38
 アルトゥールさん、おはようございます。お盆休みだというのに、おじゃまいたします。
 「地球時代」という言葉、言い得て妙で、おもしろいですね。
 でも、読んでいて、はっとさせられてしまいました。と、いうのは、わたしは、チェリビダッケやヴァントなどがどちらかと言うと苦手だったのですが、それは、それらの演奏が、極限まで研ぎ澄まされていて、アルトゥールさんがおっしゃる「宇宙的要素」を前面に押し出しているからこそなのではないか、と、思い当たったからです。
(これはもちろん、わたしだけの好みの問題で、芸術的にはたいへんなレヴェルに達した名演なのは、アルトゥールさんの記事にあるとおりだと思います)
 そう言えば、朝比奈さんの第5の演奏会は、よく言われるように、いつも、何だか十八番の舞台みたい、演奏する方も聴く方も、楽しくて仕方ないといった感じで、完全に地球的でした。(笑)
 終演後の拍手では、ほんとうにみんなにこにこ笑っていたのがなつかしいです。
 そうか、わたしは地球的なブルックナーが好きだったのか・・・・!
Nora
2007/08/15 11:58
Noraさん、コメントを有難うございます。
ブルックナーは聴く時の心の状態が大きく影響してくる
ように思います。
私も実は、チェリビダッケ、ヴァントのような「研ぎ澄ま
され型」は心に余裕がある時でないと聴いていてシンドイ
感がします。普段は研ぎ澄まされていない(失礼!)朝比
奈さん、ベーム、ティントナー等の方が聴きやすいです。
あと自分が実演を聴いた指揮者だというひいきもあり、ス
クロヴァチェフスキも好きでいます。
このようにその時の気分次第で好きな演奏を聴けるという
のは本当に贅沢ですよね。
アルトゥール
2007/08/15 22:09
おはようございます。
チェリビダッケのブルックナーは、DGの廉価盤ボックスで聴いています。
この5番交響曲は雄大壮大な演奏で、圧倒されます。特に第2楽章の美しさには感動しました。テンポは大変に遅く、内面にどんどん沈潜していく演奏でした。
若い頃、第5は難しくてわかりにくい交響曲と思っていたのですが、このごろは頻繁に取り出しては聴いています。トシをとると思考と嗜好が変わるのかもしれません。
mozart1889
URL
2007/08/16 09:11
mozart1889さん、お久しぶりです。
コメントを有難うございます。
チェリビダッケの第5は仰るとおり、第2楽章が
素晴らしい出来だと思います。私も大変感動しました。

なお私もトシを取るごとに嗜好が変わります。ブルッ
クナーに開眼したのは約10年前で、それまではブル
ックナーの音楽自体がよくわかりませんでした。
逆に年を取ったせいで若い頃ほど好きでなくなった作曲家
や曲もあります。
アルトゥール
2007/08/16 20:57

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
チェリビダッケのブルックナー「交響曲第5番」 クラシック音楽のある毎日/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる