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zoom RSS 村上春樹『騎士団長殺し』第1部、第2部(新潮社)

<<   作成日時 : 2017/03/10 21:07   >>

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村上春樹氏の新作『騎士団長殺し』第1部、第2部(新潮社)を読み終えた。

本作は単行本2冊にまたがる大作である。
村上春樹の長編小説は、2013年に出た『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』以来ということになる。しかし『色彩を持たない…』は、単行本1冊で収まる標準的な長さの長編だった。単行本2冊以上の大作は、2009年、2010年に出た『1Q84』以来である。

さて『騎士団長殺し』のストーリーは、36歳の男性画家が主人公で、彼の一人称で語られる。主人公は、会社社長や学会の大物の肖像画を描くことで生計を立てている。子どもはいないが、妻と仲良く2人で暮らしていた。ところが、ある日とつぜん妻から離婚を持ちかけられる。驚き、傷ついた主人公は家を出て、1ヶ月半の間、東北地方を一人で自動車で旅した後、友人・雨田政彦の父で日本画家の雨田具彦の住んでいた小田原の山あいに住むことになった。雨田具彦は現在92歳で、認知症状態となり、伊豆高原の養護施設に入っている。

ある日、主人公は、小田原の家の屋根裏で「騎士団長殺し」という名札のついた画を発見した。これは雨田具彦の未発表の作品で、これまでの具彦のどの作品とも作風を異にする大傑作だった。この画の発見から、奇妙な出来事が起こるようになる。ある日、隣に住む謎めいた50代の男性が自分の肖像画を描いてほしいという依頼を持ちかけてきた。

本作は、村上春樹らしいユニークな比喩・暗喩が駆使された文体で、読んでいて楽しい。村上春樹ファンの方は特にそうだろうと思う。
また管理人は、画を描く際の画家の心理描写が興味深かった。管理人はこれまで、村上春樹の有名な作品はだいたい読んできたつもりだが、絵画がテーマになった作品はこれまでなかったのではないだろうか。絵画への興味は村上春樹の新境地なのかもしれない。

だが、全体としてマンネリ感は否めない。仲の良かった妻に去られたり、地面に掘られた穴が重要な役割を果たしたりする点は、1990年代の半ばに出た『ねじまき鳥クロニクル』にそっくりだと思う。
現実の世界ともう一つの世界というモチーフも、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』と類似している。
また登場人物に新味がないのではないだろうか。謎めいた中高年男性、芯の強い聡明な少女、セックスの好きな人妻、死に直面している老人、といった人物の造形は、これまでの村上春樹の作品の中に既視感のあるものばかりだ。

前の大作『1Q84』は、スケールの大きさ、ダイナミズム、読者への問題提起といった点に、それ以前の作品を上回る要素があった(もっとも、それがあったのは『1Q84』のBOOK1とBOOK2までで、BOOK3には失望したのを覚えている)ので、本ブログでは非常に好意的な記事を書いたものだった。
しかし『騎士団長殺し』は新鮮味がなく、これまでの村上春樹作品に登場した要素を形を変えて、まとめただけ、と厳しく評価されても仕方がないだろう。
さらに、クラシック音楽に関する蘊蓄が多すぎ、何のためにこんな蘊蓄を傾けるのだろう、と思った。

本作は、総じて、オリジナリティーを欠いたマンネリ作という評価をせざるを得ない。
村上春樹は現在68歳。30年以上、日本の文学畑で最も多くの読者に愛されてきた村上も、老いには勝てず、創作に必要なイマジネーションが枯れてきたのかもしれない。そうだとすれば寂しいことだ。

もっとも、『ねじまき鳥クロニクル』や『1Q84』を未読の読者が本作を読んだら、傑作と感じるだろうと思う。




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新潮社
村上 春樹

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