橘木俊詔「格差社会」(岩波書店)

橘木俊詔「格差社会」(岩波新書)という本を読んだ。ぼくは1990年代の終わりに同じ橘木教授の「日本の経済格差」(岩波新書)を読んだことがある。当時はまだ一億総中流と思われていた日本で、経済格差が進行しているという問題を投げかけた本だった。それ以来、ぼくは格差問題に興味を持つようになり、橘木教授の「安心の経済学」「家計からみる日本経済」(以上、岩波書店)「封印される不平等」(東洋経済新報社)や、佐藤俊樹「不平等社会日本」(中公新書)といった本を読んできた。

さて今回の「格差社会」という本は、これまでの格差論議を手際よくまとめたもの。最初の第1章で日本の所得格差や貧困率が先進国中で最悪レベルに陥っているという事実が示される。そしてそれ以降の章で、その原因の分析や、格差は景気が回復しても縮小しないだろうという予測が示される。また現行の税制の問題点や、社会保障制度の不十分さについて述べられ、このように格差が拡大したままの状態が続くと将来どのような社会になってしまうかが説かれる。最後に社会保障の立て直しのため、消費税増税、特に累進消費税導入の必要性が主張される。
ぼくがなるほどと思ったのは、日本では、高所得者が所得税を増税されたとしても勤労意欲を失ったりしないし、利子・配当に多く課税されても貯蓄行動が失われたりしないという指摘だ(P159)。もしそうなら税の累進度を軽減するこれまでの税制は根拠を失うことになる。

いずれにせよ、多くのデータを駆使した著者の主張は非常に説得力がある。また地方自治体の努力や職業教育の拡大により失業を減らすべきという著者の主張は、再チャレンジを唱える安倍新首相の問題意識とも一致すると思う。安倍首相にはぜひ読んでもらいたい一冊だ。

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この記事へのコメント

pMailAgency
2009年08月27日 18:43
◆技術者等の非正規雇用を明確に禁止すべき

▼民主党は、マニフェスト案において、『原則として製造現場への派遣を禁止』とす
る一方で、『専門業務以外の派遣労働者は常用雇用』としています。『専門業務』の
『常用雇用』が除外され、かつ『専門業務』に技術者 (エンジニア) 等が含まれると
すれば、これは看過できない大きな問題です。
技術者 (エンジニア) 等の非正規雇用 (契約社員・派遣社員・個人請負等) を明確
に禁止しなければなりません。
改正前の労働者派遣法に関する「政令で定める業務」の内容は、技術の進展や社会
情勢の変化に対し時代遅れになっており、非正規雇用の対象業務を、全面的に見直す
必要があります。
また、派遣社員だけではなく、「契約社員」・「個人請負」等を含む非正規雇用を
対象としなければなりません。

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