ギーゼキングのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第9~11番」

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第9~11番の3曲を聴いた。演奏はワルター・ギーゼキング。ギーゼキングはぼくの大好きなピアニストの1人だ。この3曲は第9番と10番が1956年10月19日と21・22日、第11番が同年10月19日と20日に録音されている。ギーゼキングはこの年の10月26日に開腹手術の経過が思わしくなく亡くなっているから、死の1週間前以降の録音だということになる。文字通り最後の録音である。

ピアノ・ソナタ第9番と第10番はともに作品14の番号が付せられ、ともに伝統的な4楽章形式と違う3楽章構成となっている。ただし、第9番が緩徐楽章は省略され3楽章とも急速楽章となっているのに対し、第10番は、第2楽章が緩徐楽章で第3楽章がスケルツォとなっているから伝統的なソナタ形式の第4楽章が欠けていることになる。
第9番はベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でも比較的地味な存在ではないだろうか。しかし青年らしい明快な曲で、ぼくは特に第1楽章が中々好きだ。
第10番は名曲だと思う。第1楽章はたいへん優美だ。第2楽章はひょうひょうとしていてユーモラス。第3楽章は軽快で愛らしい。曲そのものが非常に充実している感がする。

「グランド・ソナタ」と呼ばれることもあるピアノ・ソナタ第11番は伝統的な急―緩―急―急の4楽章形式で書かれている。第1楽章はのびやかでスケールが大きい。第2楽章は一転してロマンティックで叙情的だ。この楽章はベートーヴェンの書いたすべての緩徐楽章の中でも最も美しいものの一つだと思う。第3・4楽章は優美だが、第4楽章では途中でいったん巧妙に転調する。この曲は定評どおり初期ソナタの中でも屈指の名曲だと思う。(個人的には第11番より10番の方が好きなのだけれど…)

ギーゼキングの演奏はテンポを一定に保ち、感情の移入をできるだけ排除した端正なもの。こういった演奏は悪くすると味気ないものになってしまうが、ギーゼキングはその絶妙なタッチでそれぞれの曲の持っている良さを引き出すことに成功している。これらの3曲の中では、とりわけ第10番がすばらしい演奏だと思う。ただし第11番の第1楽章ではもうちょっと伸び伸びした弾き方の方が良いように思うが…。
ギーゼキングというとモーツァルトやドビュッシー、ラヴェルのイメージが強いが、ベートーヴェン演奏家としても大した存在だと思う。彼は唯一の来日公演のときもベートーヴェンの演奏をしたそうだ。録音途上だったベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集が突然の死去により10曲を残したままに未完に終わったことは誠に惜しいことだと思う。

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