薬師院仁志「日本とフランス 二つの民主主義」(光文社)

薬師院仁志「日本とフランス 二つの民主主義」(光文社新書)という本を読み終えた。最近読んだ、同じ光文社新書から出ている城繁幸「なぜ若者は3年で辞めるのか?」という本が期待以上に面白かったので、他の光文社新書も読んでみようと思って読んだ本である。結果からいうと、大学生および一般人に向けた非常にすぐれた啓蒙の書だと思った。

本書で著者が訴えていることは一つ、民主主義はアメリカ型の自由民主主義だけではない、ということである。
アメリカ型の自由民主主義は、「自由」に最大の価値を置き、徹底して個人の自由(とそれに伴う自己責任)を追求する。それに対して、もう一つの民主主義が存在する。それは「自由」ではなく「平等」に最大限の価値を置く民主主義であり、社会民主主義といわれる思想である。フランスに典型的にみられるが、この思想はフランスだけでなくイギリス、イタリア等ヨーロッパでは既に多数派となっている。著者は、自由民主主義よりも社会民主主義が良いと主張しているわけでない。問題は、日本の政治状況において、自民党が一貫して自由民主主義を主張してきたのに対し、野党勢力である旧日本社会党や現在の民主党が、もう一つの民主主義である社会民主主義を、選択肢としてこれまで有権者に提示できなかった点にある。そしてこれまでひたすら「自由」のみを追求してきたツケが顧客主義の蔓延、社会的連帯の欠如といった社会問題となって現れているのである。
著者はこのような認識の下、フランス型の「平等」に最大の価値を置くもう一つの民主主義思想の紹介に努める。そしてフランスの事例を中心に、その長所と問題点を抉り出していく。

ぼくの考えでは、10年くらい前ならともかく、ここまで規制緩和や「小さな政府」を追及してきた以上、いまさら自由民主主義を捨てるというのは得策ではないだろう。しかし、著者が繰り返し述べているように、フランス型のもう一つの民主主義が存在すること、そしてそれがどのような内容のものなのか知っておくことは決して悪いことではない。むしろ必要なことだ。そして政府の各種の政策運営について、もう一つの民主主義の角度からすればどうなのか、たえず検討していくことは有意義なことだろう。

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  • 遥かなる不自由な平等

    Excerpt: 『日本とフランス二つの民主主義』 薬師院仁志著(光文社新書)を読んだ。 Weblog: NAGISA TAXI racked: 2007-05-30 06:00