桐野夏生『リアルワールド』(集英社)

桐野夏生『リアルワールド』(集英社文庫」という小説を読み終えた。この秋、『グロテスク』『
OUT』と続けて桐野さんの小説を読み、ともに面白かったので、桐野さんの他の小説も読みたいと思った。しかし『グロテスク』と『OUT』はともに上・下に分かれている比較的長い小説だったので、もっと短い小説を読んでみたいと思った。そこでアマゾンで検索したり店頭で見比べたりして、この本を選んだ。

この小説は、ホリニンナことトシちゃん、テラウチ、ユウザン、キラリンの女子高生4人組をめぐる物語である。トシちゃんの隣家で、トシちゃんがミミズという仇名をつけている男子高校生が実母を殺害するという事件が起きる。トシちゃんたち4人が、ほんの行きがかり、出来心で男子高校生の逃走を助けたことから物語は進展していく。

ここで描かれているのは、大した考えもなく、ほんの出来心・遊び心でした行いが、取り返しのつかない惨事を招いてしまうという日常に潜んでいる落とし穴である。このような落とし穴は決して高校生の世界だけでなく、ぼくたち大人も、ちょっとしたことではまりこんでしまうものだ。高校生のさりげない日常からこのような落とし穴をえぐり出していく桐野さんのストーリーテリングの巧さは、さすがだと思う。ぼくにとって十分満足できる1冊だった。

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この記事へのコメント

2006年12月10日 12:59
 アルトゥールさん、こんにちは。桐野夏生さんの「OUT」、素晴らしいハードボイルドでしたね。普通の家庭のおばちゃん<雅子>にすっかり魅了されてしまいました。確かあの小説はアメリカのミステリー賞か、何かに日本の作家で初めてノミメートされたと思うのですが。あの厚い2冊のハードカバーを職場の図書館で借りてきて、1日ちょっとで読み終えてしまいました。読み出すと眼が離せなくなり、飲みながら読んでいたら行儀が悪いと家内に叱られたものです。5,6年前の話しです。アルトゥールさんの記事を読ませて頂き、お正月は<グロテスク>で楽しもうと決めました。それでは又、失礼致しました。
2006年12月10日 14:31
my favorite storiesさん、コメントありがとうございます。
「OUT」は、日本人作家で初めてアメリカのエドガー賞
(推理作家協会賞)の候補になったらしいですね。
ぼくもあっという間でした。
ただ個人的には、ラストシーンで<雅子>に
「てめえなんかとっとと地獄へ落ちろ」とでも
言ってほしかったですけど。
ちなみに「グロテスク」は「OUT]より面白かったですよ。
2006年12月13日 18:52
 アルテゥールさん、今晩は。アルテゥールさんの記事を読ませて頂き、「グロテスク」をすぐに読みたい衝動に駆られ、昨日は寒くて雨模様でしたので、役所を休み、伊勢丹に家内が買い物に行くのにつき合わされ、デパート内の紀伊国屋書店でこの本を購入しました。今日の4時頃から読み始めたのですが・・・<第一章 子供想像図>を読み終えて・・・この姉妹余りにも私の境遇に似ているのに、思わず唸ってしまいました・・・実は・・・私、クォーターなんです。父方に似て、ヨーロッパ(イスラエル系)の容姿が濃く、子供の頃は <スパイの子> などといじめられたこともあるんですよ。昭和20年代「鬼畜米兵の時代」です。ですから小、中学校の頃は自分が醜いといつも思っていました。それが・・・10代の終わり頃から自分の世界が一変して・・・青春時代に多くの女性と恋愛をしました。
 ですから、転職して教壇に立った時は、生徒から「先生、外人ですか」とか「先生、ハーフですか」とか、「先生、日本語うまいですね」などとクラスが変わる度に言われ続けてきました。その度に思わず苦笑いです。
 共通の話題に親近感を覚えて・・・失礼致しました。
2006年12月13日 19:32
my favorite storiesさん、コメントありがとうございます。
また拙記事を読んで「グロテスク」を買っていただき、
誠に恐縮です。
私は昭和30年代生まれですが、たしかに昔から日本の子ども社会
には自分たちと異質なものに対するいじめがあるように思います。
青春時代に多くの女性と恋愛されたとはうらやましいです。
私の学生時代は女子大生ブームの頃でしたが、クラシック音楽と
ドストエフスキーが好きという私は、当然のように
女性とはあまり縁がありませんでした。
「グロテスク」は最初から惹き込まれますね。ただ主人公と
同じような悩みを抱えている、または抱えていた女性が読むと
ちょっと辛いかも…と思ったりします。

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