佐和隆光「この国の未来へ」(筑摩書房)

佐和隆光「この国の未来へ」(筑摩書房=ちくま新書)という本を読んだ。2007年2月10日の刊である(実際には2月6日頃店頭に置かれていた)。佐和教授は有名なリベラル派の経済学者だが、本を出版するのは久しぶりのような気がする。ぼくはこれまで同教授の「市場主義の終焉」「日本の「構造改革」」(ともに岩波新書)等の著作を読み、その主張に共鳴することが大きかったので、今回も迷わず購入した。

今回の本での佐和教授の主張はシンプルである。まず個人の「豊かさ」は経済成長率(GDP)とは別物であることを主張する。そして今後の日本のポスト工業化社会での2本柱は、アメリカの先例を見ればわかるように、ハイテク製造業とソフトウェア産業であるが、日本のこれまでの受験重視、そして歴史学や芸術等の人文学軽視の教育ではポスト工業化社会を乗り切れないとして、教育改革を訴える。
また20世紀がどのような世紀だったのかについて、二酸化炭素排出の世紀として捉えることができるとし、21世紀の科学技術は持続可能な開発(sustainable development)に資するものでなければならないと訴える。そして環境保全に役立つイノベーションの必要性・可能性を説く。

佐和教授は今回の本では新しいことは、「リスクの共同管理」(リスクに対し自己防衛だけを考えるのでなく、リスクの引受け手に対して報奨金を与えるなど、リスクを取ることをポジティブなものにしようという考え)という概念を提出しているくらいで、あまり新味のあることは言っていないように思う。また従来からの主張である「第三の道」構想(ケインズ主義とも市場原理主義とも異なる第三の道という意味)についてはあまり触れられていない。むしろ環境問題に多くのページが割かれている。同教授は「この国の未来へ」という本のタイトル通り、日本の未来に向けたメッセージを一般の人向けに伝えたかったのかもしれない。

それでも佐和教授の著作に一貫して流れている、経済学は個人の幸福のために存在する学問でなければならないという信念は、今回の本でも強く感じ取ることができた。ぼくにとってはこの連休に読むのにちょうどよい本だった。

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