ケンプのシューマン「交響的練習曲」

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昨日シューマンの交響曲第1番を聴いてあまり親しめなかったので、今日はぼくの愛好する「交響的練習曲」作品13を聴いてみた。演奏は、ドイツ・オーストリアのピアノ作品を聴くなら一番に好きというくらい敬愛しているウィルヘルム・ケンプ。録音は1972年2月である。ケンプのピアニストとしてのキャリアの最晩年の録音だということになる。

この交響的練習曲は、シューマニアーナな世界というのだろうか、シューマンの持つデモーニッシュな面が十二分に表され、若き日のシューマンの情熱、激情、悲嘆といったものがぎっしり詰まった名曲だと思う。シューマンの器楽曲の中では、「クライスレリアーナ」作品16、「幻想曲」作品17、それにこの交響的練習曲あたりが最も名作なのではないだろうか。昔はこの曲は録音に恵まれない感があったが(この曲との相性が最も良さそうなホロヴィッツに録音がないのは意外だ)、1980年代以降にポリーニ、アシュケナージ、ブレンデルと相次いで大物ピアニストが録音し、そういう不満は解消された。実演でも取り上げられる機会が多いように思う。

さて今日聴いたケンプの演奏だが、非常にユニークだ。印象的な冒頭部では、あまり感情移入せず穏やかに開始する。その後も所々でぼくのようなケンプ・ファンにとっては微笑させられる滋味豊かな個所があるものの、全体として印象は、静かで淡々としている。晩年のケンプが到達した心境が現れているのかもしれない。聴く者の心にやさしい演奏とでもいうようなことができると思う。もっともロマンティックなシューマンを求める人(そういう人が多いと思う)にとっては不満の残る演奏だと思う。ぼくにとっては十分に有難い演奏だし、今回も聴いて満足することができたけれど…。

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