アラウのシューマン「幻想曲作品17」

シューマンの「幻想曲ハ長調作品17」を聴いてみた。演奏はクラウディオ・アラウで、1966年9月の録音である。アラウはシューマンのピアノ曲を多数録音しているが、これはその最初期のものである。

画像

シューマンの「幻想曲作品17」は彼のすべての作品の中で指折りの名曲ではないだろうか(もっともぼくは彼の全作品を聴いたわけでないが…)。シューマンの最高傑作というにはためらいがあるけれど、ベスト3はと問われれば、ぼくは「ピアノ協奏曲」、「詩人の恋」とともにこの曲を挙げると思う。
この曲は後に彼の妻となるピアニスト、クララ・ヴュークに熱愛中の時期に作曲されたらしい。そのせいか第1楽章には、シューマンの内面で激情が渦巻いているのがそのまま現れている。そしてどこかに心の優しさが感じられる。すばらしい楽章だ。第2楽章に内心の高揚と情熱が現れている。そして第3楽章。この夢を見るようにロマンティックで心優しく、そして内心の不安定さが感じられる楽章は、シューマンの書いたすべての作品の中でも最高の芸術だと思う。

アラウの演奏は、いつもながら遅いテンポのじっくりしたもの。しかし弛緩した部分は微塵もなく、こう弾かなければならないという確信に支えられているのがよく分かる。この曲としてはもっと奔放な演奏スタイルの方がふさわしいのかもしれない。けれどアラウの演奏も聴けば聴くほど味わいが出てもので、ぼくにとっては常に座右において楽しみたいものだ。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック