桐野夏生『残虐記』(新潮文庫)

桐野夏生『残虐記』(新潮文庫)という小説を読み終えた。
この小説は主人公の景子がまだ10歳・小4の時、工員のケンジに拉致・監禁されたところから始まる。景子はケンジの住む部屋に監禁され、監禁生活は1年余りに及ぶ。ケンジの隣室にはヤタベというケンジと同じ鉄工所に勤める男が住んでおり、景子はヤタベに助けを求めようとするが…という物語である。

この小説は2000年に報道された新潟県に少女監禁事件に触発されて執筆されたらしいが、監禁された期間も犯人の年齢・境遇もまるで違うので、実際の少女監禁事件とは全く別個の小説と考えた方が良いと思う。
この小説で描かれている、主人公の少女と監禁したケンジと隣人ヤタベの三つ巴(あるいは宮坂検事を含む四つ巴)の性的関係、どこまでが事実でどこまでが想像だかわからない性的関係は、非常にアブノーマルでディープでグロテスクでアグリーだ。異常なまでに異常だ。
解説(筆=精神科医 斎藤環)では、谷崎潤一郎『鍵』との類似に言及されているが、ぼくに言わせると谷崎『鍵』の方がよほど健全で理解可能だ。

ぼくは桐野さんの小説は、昨年9月に初めて『グロテスク』を読み、以下『OUT』『リアルワールド』『魂燃え!』『玉蘭』、そして今回の『残虐記』と読んできたが、どれも非常に面白い。ぐいぐい読ませる筆力がある上に、人間というものの持つ醜い側面をえぐり出す能力には凄いものがある。ぼくにとっては、現役ではもっとも注目している作家だ。

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この記事へのコメント

my favorite stories
2007年08月03日 20:11
 アルトゥールさん、今晩は。実はこのブログを読ませて頂き、昨日、「残虐記」を早速買ってきました。本屋さんに積まれていました。いやあ、ブログは読みようで知識が得られますね。音楽、本・・・
 但し、素人の書いた詩や短歌、随筆らしいものは・・・この辺でやめておきます。
 ところで六本木ですか。ここも私の若い頃は庭みたいなものだったんですよ。六本木から赤坂にかけては私の若い頃のテリトリー・・・当時の女優さんとも遊びましたねぇ。明治生まれの母は、今でも車で婆さん連中と六本木ヒルズに行くそうです。私は最近の六本木に1度も行ったことがないのに・・・人間て不可解な生き物ですね。この年になって実感します。
 又、これからも宜しくいろいろお教え下さい。失礼致します。
2007年08月03日 21:24
my favorite storiesさん、コメント有難うございます。
『残虐記』は異色作というか、読後感は良くありませんでした。
読後感が悪いのは桐野さんの作品によくあることですが…。
ただし私は、こういう深刻な小説が好きなのです。

六本木は、戦後、アメリカの進駐軍向けに飲食店等ができ、それ
が若者の街として生まれ変わって発展したという話は聞いたこと
があります。女優さんともお遊びになったとはうらやましいです
ね。
女優さんといえば私は、高校・大学の頃、多岐川裕美さん(但し
10歳以上年上でした)が好きで、将来あんな綺麗な人と結婚で
きたらいい等とバカなことを考えていました。ところが今では、
若い女優さんにはすっかり興味がなくなりました。

こちらこそ、これからも宜しくお願い申し上げます。

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