飯尾潤『日本の統治構造』(中央公論新社)

飯尾潤『日本の統治構造』(中央公論新社=中公新書)という本を読み終えた。著者の飯尾氏は1962年生まれ、政策研究大学院大学教授で、ニュース報道番組での登場も多いように思う。本書は2007年7月25日の刊である。

本書は、日本では議院内閣制が採られているため、リーダー(=内閣総理大臣)が強いリーダーシップを発揮しにくいというよく見かける見解に疑問を呈するところから始まる。イギリスは同じ議院内閣制を採っている国なのに、内閣・首相への権力の集中が強い。ところが大統領制を採るアメリカでは、むしろ権力が大統領と議会とに分散している。このように議院内閣制だからといって必ず権力が分散するとは言い切れないないのである。

そして著者は議院内閣制の最も重要な特質は、行政を担う内閣が議会の信任を得て成立していることであるとし、有権者→国会議員→首相→大臣→官僚と権限委任の連鎖が生じることによって議院内閣制が民主制の一形態となるという。しかしこれまでの日本では、衆議院選挙と関係なしに、自民党内の総裁選挙によって首相が決定されたり、首相による大臣の任命という原理が曖昧であったりしたため、上記の議院内閣制の原理の逸脱が生じ、大臣が官僚の代弁者になるような本末転倒の現象が生じてきたのだ。著者はこれを「官僚内閣制」と呼んでいる。

そして以降で著者は、省庁内部の実態や法律制定のプロセス(これは意外にも必ずしも民意を外れたものではない)、国会議員と官僚がどのように付き合っているか等に説き及ぶ。さらにイギリス、アメリカ、フランス、韓国の各国の統治構造を比較分析する。そして現代の日本の統治構造の問題点を、「権力核」の不在と、「権力核」の民主的統制の必要だとする。

本書を通読してみて、日本の政治・行政がどのように運用されているのか理解を深めることができた。素人でもうすうす感じていたこと(例えば、法案成立の際の野党への配慮、族議員の役割、等)がズバッと歯切れ良く論じられている。内容は多岐にわたっていながらその分析や提言には深いものがあり、よくこれだけの内容を新書サイズにまとめることができたと感心してしまう。著者の頭の良さを感じさせる。文字通り「日本の統治構造」がどうなっているのかを知りたいと考えている人にとっては、絶好の著作だと思う。



日本の統治構造—官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)
中央公論新社
飯尾 潤

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ほんとうに統治構造が ...
日本の政治はどのよう ...
官僚を使いこなし、政 ...

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