アラン・グリーンスパン『波乱の時代 上・下』(日本経済新聞出版社)

アラン・グリーンスパン(山岡洋一・高遠裕子訳)『波乱の時代 上・下』(日本経済新聞出版社)という本を読み終わった。本書は1987年から2006年まで、18年もの間、FRB(米連邦準備理事会)議長の職を務め、「マエストロ」と讃えられたグリーンスパン氏の回顧録である。上・下で約700頁、重厚な書だった。
ぼくは本書を昨年末に読み始めたので、読了するのに2ヶ月以上かかったことになる。久しぶりにずっしりと重量感のある本を読み終えたという感想を持った。

本書は全部で25章からなり、上巻に第1章から11章まで、下巻に12章から25章までが収められている。そして上巻に収められた11章まででグリーンスパン氏の半世紀が語られ、12章以降で同氏が現在及び将来の世界情勢について分析するという構成を取っている。

上巻では、自らの生い立ちと、若き日の自らの思想形成にあたり哲学者アイン・ランドの自由意志論に大きな影響を受けたこと、そしてニクソン、フォード以降のアメリカの歴代大統領との関わり合いや各大統領の人柄が描かれる。
そして自らがFRB議長に就任して以降、時代を追ってFRBがいかなる理由に基づきいかなる金融政策を取ってきたかが回顧される。ブラック・マンデーや9・11同時多発テロのような大きな危機に際しても、同氏がいかに冷静に状況を分析して危機を乗り切ることができたか、自賛に陥ることな平明に淡々と語られる。

ぼくはこの上巻で、それぞれの時代を思い浮かべて、懐かしい思いがするとともに、「あのFRBの政策はそういう意図だったのか。」と思い当たる点があった。グリーンスパン氏らFRBの深慮には舌を巻かざると得ない感がする。

そして下巻では、氏の持論である自由主義・市場主義に立場から、今後2030年頃まで、米国はじめ世界各国の情勢について分析がなされる。
氏が最も重視するのは、財産権の尊重と法の支配である。個々の財産権を法律に基づき十分に尊重すれば、個々の危機が発生しても、市場原理が働いて再び均衡が回復するという。アダム・スミス以来の学説だが、氏のように豊富に実例を挙げて議論を展開されるとやはり説得力がある。

このように市場主義の立場から、米国が現在直面している経常赤字、環境問題、所得格差といった問題には楽観的なようだ。他方、米国の教育力の低下や、今後増大していく高齢者に対する年金の財源不足(この点は、ブッシュ現大統領の失政が危機をもたらしたという)について警告を発している。

読み終えて、大きな読み応えを感じることができた。冒頭の繰り返しになるが、経済・ビジネス分野でこのような重厚な書に出会うことができたのは、本当に久々だった。翻訳も平明でたいへん読みやすかった。

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