門倉貴史『官製不況』(光文社)

門倉貴史『官製不況』(光文社=光文社新書)という本を読み終えた。著者の門倉氏は1971年生まれ、著書多数の人気エコノミストである。この本は、2008年4月20日刊とあるが、実際には今週半ばに書店に置かれていた。たいへん読みやすく、面白く、3、4時間で読み終えることができた。

日本では今年に入ってから、株価が大きく下落している。これは一般には、昨年夏にアメリカで発生したサブプライム問題と、それに基づく景気の先行不安からきた世界同時株安の一環と考えられているが、実は日本の株価の下落率は世界の主要国の中でダントツに悪いのだ(07年の株価暴落率はマイナス6,55%で世界ワースト2位)。当のアメリカより悪い。

著者は株価低迷の原因は、日本の政治状況や経済政策に外国人投資家が不信感を抱き、「日本売り」に走ったことが原因だという(なおこの点は、門倉氏の指摘を待つまでもなく、多くのマスメディアによって指摘されている)。
では外国人投資家は、日本の政治状況・経済政策のどのような点に不信を抱いたのか。門倉氏は、①07年9月に成立した福田内閣で構造改革が遅々として進まないこと、②日本が進めている構造改革が中身を伴わない名ばかりのものであること、の2点が考えられるという。
そして2000年代の日本の経済成長は、小泉内閣による構造改革の要因によるものではなく、アメリカを中心にした世界経済の好調に伴い輸出が増加したという海外要因によるものだという事実を明らかにする。
また小泉内閣の下で進められた道路公団の改革、郵政民営化、独立行政法人の改革などが実際には不十分なもので、同内閣の構造改革が中身を伴っていなかったことを述べる。

その上で、最近の景気不透明感の原因となっている改正建築基準法、改正資金業法、金融商品取引法(この3法は3Kと揶揄されているようだ)、日本版SOX法(内部統制法)がどこに問題を抱えているか、いかに悪影響を与えているかについて論じていく。さらに門倉氏の筆致は、ワーキングプア、年金問題、サブプライム問題が世界各国に与える影響にまで説き及ぶ。門倉氏は新興国の実体経済については、サブプライム問題にもかかわらず、楽観的に考えているようだ。

本書は、現時点でのトピカルな問題を取り上げたものであり、1年も経てば古い本のように感じられるかもしれない。しかし、「現時点」での日本の問題状況をコンパクトに解説した本としては非常にすぐれた本ではないだろうか。(ぼくのように)ちょうど今の日本が抱えている政治・経済問題を手っ取りばやく理解したいと思っている読者にとっては、非常にありがたい本だと思う。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック