中尾武彦『アメリカの経済政策』(中央公論新社)

中尾武彦『アメリカの経済政策』(中央公論新社=中公新書)という本を読み終えた。著者の中尾氏は1956年生まれ、現在、財務省国際局次長を務める現役の行政官である。本書は本年2月25日の刊である。

本書は、題名どおり、現在およびこれまでのアメリカの経済政策と経済問題を分析するとともに、将来のアメリカ経済を展望するものである。
まず日本と異なり高成長を続けてきた過去10年間のアメリカ経済を振り返るとともに、過去に政府およびFRB(連邦準備制度理事会)がどのような経済政策をとってきたかを見ていく。続いて現在のアメリカ経済が抱える問題点を所得格差の問題を中心に取り上げるとともに、その対応策を分析する。
さらにアメリカの経済政策について、財政政策と金融政策にわけて、マクロ的な観点からどのような政策が採られているか、それはどのような考え方に基づいているかを考察する。そして対外経済政策や、革新の著しい金融セクターの状況についても言及されている。

ぼくはいちおうアメリカ経済についてウォッチしているつもりだけれど、本書は、図・表を多用して、数字をきちっと挙げているので、アメリカの経済問題のまとめとしてはたいへん便利だ。また、大統領はもとより財務長官やFRB議長ら要人のいついつの発言や、何という名前の法律が、いつ成立してそれがどんな内容だったか、というような(ぼくのような)素人には把握しきれない細かい論点についても、丁寧に言及がなされている。

なお現在世界を揺るがしているサブプライム・ローン問題については、それほど深入りされていない。が、それは本書の価値を高めるものではあっても、損なうものではないのではないだろうか。なぜならサブプライム問題は、真相が今ひとつよく分からない上、今後の進展についても政策当局者の判断にかかっているという面が強く、現時点では、客観的な論述は困難だからだ。

本書は現役の行政官が執筆したものらしく、よくまとまっており、問題点の取り上げ方もバランスが取れていると思う。ただし記述がやや平板で、インパクトに欠けるような気がするが…。その点をいうのは贅沢なのかもしれない。
1冊でアメリカ経済の現状を把握できるとともに、その今後を占う上でも大いに役立つという、小著ながら貴重な書だと思った。

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