ボロディンSQのショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第8番」


今日はショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番ハ短調作品110を聴いてみました。演奏はボロディン四重奏団です。
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ボロディンSQは現在も活動中ですが、今日聴いたのは第1ヴァイオリンがロスティスラフ・ドゥビンスキー、第2ヴァイオリンがヤロスラフ・アレクザンドロフだった時代の録音です。録音時期はCDに表記がありませんが、1960年代後半から1970年頃ではないでしょうか。旧メロディアへの録音をChandosが復刻したものです。ボロディンSQは第1ヴァイオリンがミハエル・コペリマン、第2ヴァイオリンがアンドレイ・アブラメンコフに交代した後の80年代にもショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全集を完成させていますので、今日聴いたのは旧録音だということになります。

今日聴いた第8番は、「戦争とファシズムの犠牲者の思い出に捧げる」と題されたもので、全曲を通じてショスタコーヴィチ自身の名前であるD-S-C-H(レーミ♭ードーシ)の音符が出てくることでも有名です。彼の15曲の弦楽四重奏曲の中で最も有名なのではないでしょうか。

まず第1楽章は悲しみに満ち溢れています。戦争とファシズムの犠牲になった人々への哀惜の念がこめられているようです。
第2楽章は強いアタックで始まる激しい楽章です。戦争の残酷さ・悲惨さの告発と怒り・抗議が表されているのでしょう。
第3楽章は間奏曲のようですが、戦争が終わった後の虚無感のようなものが感じられます。
第4楽章は前半で第2ヴァイオリン以下の和音が強く奏でられますが、ここは凄い迫力です。途中で美しい旋律も現れますが、すぐに打ち消されます。ショスタコーヴィチがこの楽章で訴えているのは、やはり戦争とファシズムに対する強い抗議ではないでしょうか。この第4楽章はたいへんな傑作ではないでしょうか。
第5楽章は静かな透明感のある楽章です。おそらく罪なくして戦争とファシズムの犠牲になった人々への弔辞が表されているのでしょう。

ボロディンSQの演奏はたいへん表現意欲の強いものです。ぼくはコペリマン時代のボロディンSQ(以下、「新ボロディンSQ」といいます)の録音も持っていますが、ドゥビンスキー時代のボロディンSQ(以下「旧ボロディンSQ」といいます)の録音がブログ仲間の間でたいへん評判が良かったので、昨年購入したのです。
新ボロディンSQの演奏がもう少し洗練されたものであったのに対し、旧ボロディンSQの演奏は表現意欲が強く、特にドゥビンスキーの感情のこもった表現が強く印象に残ります。新旧どちらかを取るかはそれこそ聴き手の趣味の問題ですが、ぼくとしてはその時の気分で聞き分けたい気がします。

以下は脱線します。ぼくがこの旧ボロディンSQの全集を手に取った時、ジャケットの写真を見て、あれっと思ったことが2つあります。1つ目は、各奏者の座る位置です。ぼくが第1ヴァイオリンがコペリマンだった時代と、さらに現在のルーベン・アハロニアンの時代に実演に行ったことがありますが、向って左から第1vn、第2vn、va、vcの順でした。とことがジャケットの写真では、ヴィオラが一番右で、現在とはヴィオラとチェロの位置が逆なのです。おそらく第1ヴィイオリンがコペリマンに代った時に現在の形に変更したのでしょう。
2つ目はチェロのヴァレンティン・ベルリンスキーの表情です。彼は1944年にボロディンSQが創設されて以来のメンバーですが、ぼくがはじめて彼を見たときは厳格そうな(しかし心の中は温かそうな)お年寄りという印象でした。ところがジャケット写真に見るベルリンスキーはまだ若く、非常に精悍な顔つきをしているのです。若い時代のベルリンスキーはこんな顔をしていたのか、と思いました。

なおこれまでコペリマン時代以降のボロディンSQのリーダー格で、精神的支柱でもあったベルリンスキーは昨年引退し、若いチェリストと交代したと聞きます。60年以上にわたる演奏活動お疲れ様でしたを、この場を借りて申し上げます。

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この記事へのコメント

2008年05月18日 22:25
アルトゥールさん、こんばんは!
ボロディン四重奏団、遂にベルリンスキーを実演で聞く夢が叶いませんでした(涙)。
さて、ボロディン四重奏団による第8番はかなりの量の録音があるようで、私もまだその全てを聞いているわけではありませんが、DECCA盤が圧倒的ですので、機会がありましたらば是非お聞きになられてみてくださいませ。
2008年05月19日 05:13
アルトゥールさま お早うございます

ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲
ようやく聴けるようになってきています。何度も何度も挑戦していたのですが、なかなか聴く、というところまで来ませんでした。

ボロディン盤の旧盤を持っているだけです。
ですから、他の演奏は全く知らないのですが、このボロディン盤で何か十分という感じもします~。
ジュリアードなどが録音していてくれたら、一度聴いてみたいものですが~。
いつも、応援ありがとうございます。

ミ(`w´)彡 
2008年05月19日 06:10
凛虞さん、コメント有難うございます!
私もジュリーニをはじめ、実演を聞きたくて聞かずじまいに
なった演奏家ばかりです(涙)。逆にハーゲン、エマーソン
の実演には行ったことがあるのですが(笑)
ボロディンSQの8番のDecca盤はChandos盤と同一の音源だ
と勘違いしていました。是非買い求めてみます。
2008年05月19日 06:16
rudolf2006さん、コメント有難うございます!
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、私はボロディンの
新盤で聞き始めました。私も何回も挑戦して、2000年
代になってからやっと大好きになることができました。
ジリュアードSQも最近1枚録音したみたいですね。全集
に発展するとよいのですが…。
こちらこそ、いつも応援ありがとうございます。
2008年05月19日 20:43
アルトゥールさん、こんばんは!
今回は旧ボロディンSQですか。この演奏、最近ブログ仲間の方々のエントリーでよく目にしますね!新ボロディンSQの8番はおっしゃるとおり、洗練された音が空間いっぱいに広がっていくスケール感がいいのですが、旧ボロディンSQの勢いや切り込みの激しさも凄いですね。うぐいすはショスタコーヴィチというと新ボロディンSQの方が馴染みがあったのですが、昨年の秋以来、旧ボロディンSQの方を聴くことが多いです。
2008年05月20日 06:47
うぐいすさん、コメントを有難うございます!
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、私も昨年までは
新ボロディンSQで満足して聞いていたのですが、
うぐいすさん、凛虞さんの記事を拝見して旧ボロディン
SQを購入してからはこちらで聴くことの方が多くなり
ました。旧ボロディンSQの感情移入には大いに共鳴で
きます。
但しまた年を取れば、新ボロディンSQの方を聴くよう
になるかもしれません。
2008年05月20日 23:01
アルトゥールさん、こんばんは。

分析、観察眼をお持ちの記事に感心しました。
私なんかは何となく聴いて、何となく記事にしてしまうので見習わねば・・と反省してしまいます。

この曲大好きで(といっても最近ショスタコのクァルテットデビューしたばかりですが・・・)ルビオ・クァルテットのを聴いています。

ボロディンSQもいつか聴いてみるつもりです。

アルトゥールさんのブログ宜しければ拙ブログにリンクを貼らせていただけますでしょうか。

よろしくお願いします。




2008年05月22日 07:02
ニョッキさん、コメントを有難うございます。
またレスが遅れ申し訳ありませんでした。

拙記事についてお褒めを頂き誠にありがとうございます。
ただし私も、聴いて思ったことを書いているだけのつもり
ですが…。

ルビオSQのショスタコーヴィチはBrilliantですね。
Brilliantは単に廉価盤に止まらず、良い録音が多いよう
に思います。もっともショスタコの弦楽四重奏曲はロシア
の団体に思い入れの強い個性的な演奏が多く、ボロディン
SQもその一つだと思います。ロシア以外の客観的な演奏
(ルビオも、自分は聴いたことがありませんが客観的だろ
うと想像します)とロシア勢の主観的な演奏の両方を持っ
ていたい気がします。

リンク大歓迎です。宜しくお願い申し上げます。

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