竹森俊平『資本主義は嫌いですか』(日本経済新聞出版社)

昨日までで竹森俊平『資本主義は嫌いですか』(日本経済新聞出版社)という本を読み終えた。「それでもマネーは世界を動かす」という副題が付せられている。著者の竹森氏は1956年生まれの慶応大学経済学部教授で、本書は2008年9月8日の刊である。
ぼくは竹森教授の『1997年――世界を変えた金融危機』(朝日新書)という本を読んだことがあり、同書がたいへん面白かったので、本書『資本主義は嫌いですか』も読んでみたのだけれど、これがまた予想以上に面白かった。読み始めたのは10月上旬だったので、まる1ヶ月もかかって読み終えたわけだけれど、仕事が忙しくなければ2、3日で読み終わっただろうと思うほど面白かった。

本書は第Ⅰ部「ゴーン・ウィズ・ア・バブル」、第Ⅱ部「学会で起こった不思議な出来事」、第Ⅲ部「流動性――この深遠なるもの」の3部で構成されている。

第Ⅰ部「ゴーン・ウィズ・ア・バブル」では、サブプライム・ローン問題がいったいどういう問題なのか、その本質が丁寧に説明されている。それだけでもありがたいのだけれど、米国の住宅バブルをもたらしたグローバル経済の構造が明らかにされる。現在世界的に、新興国で貯蓄過剰、投資需要の過剰(余談だけれど、この両者は同一ではない)が生じており、それがこれまでITバブルや今回の米国の住宅バブルをもたらしてきたのだ。
この過程で、一時「アイスランドの奇跡」と呼ばれるほど躍進したアイスランドが、なぜ国家的危機に陥ったのかも明らかにされている(全くの余談だが、今月に予定されていたペトリ・サカリ指揮アイスランド響の来日公演は、危機を受けて中止された)。
本書の随所に、ぼくが今年読んだアラン・グリーンスパン『波乱の時代』(日本経済新聞出版社)が引用されているのも、理解の助けになった。

第Ⅱ部「学会で起こった不思議な出来事」がまた面白い。ここでは主に、2005年8月に米国ワイオイミング州ジャクソン・ホールで行われたシンポジウムが紹介されている。ラグー・ラジャン、ヒュン・ソン・シンといった経済学者が、グリーンスパン前FRB議長ら連銀の政策に対して批判をしていたことがわかる。そして連銀の政策を支持する学者からの反論も紹介されている。
2005年8月といえばサブプライム・ローン問題が発生する2年近くも前であるが、一部の学者には今回の金融危機を予見していたことがわかる。

第Ⅲ部「流動性――その深遠なるもの」では、ぼくなどが「キャッシュ」というくらいにした考えていなかった「流動性」という概念がどのようなものであるかが掘り下げて考えられる。
そして世界経済が、これまでと同様今後も「規制緩和」と「規制強化」の間を揺り動くだろうととして、本書は終わる。

本書は現在世界で起きている経済危機を理解する大きな助けになるだけでなく、ぼくなどはわくわくするような内容で知的好奇心も満たされた。著者の竹森氏は学者には珍しく(失礼!)、筆力がある。竹森氏の他の著作も読んでみたいと思うほど、面白い本だった。


追記 本書、竹森俊平『資本主義は嫌いですか』は、「週刊 東洋経済」誌の2008年度の経済・経営書ベスト100の1位に選ばれた。たいへん好評のようだ。(2008年12月28日記)

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