岩田規久男『金融危機の経済学』(東洋経済新報社)

岩田規久男『金融危機の経済学』(東洋経済新報社)という本を読み終えた。著者は、1942年生まれ、学習院大学教授である。本書は2009年2月19日刊である。

一昨年夏のザププライム・ローン問題に発生に端を発し、昨年2008年9月15日のいわゆる「リーマン・ショック」に始まる金融危機、実体経済への波及、そして現在に至るまでの世界同時不況について、昨年秋辺りから専門家がいろいろな本が書き始めたようだ。
本ブログで取り上げた竹森俊平『資本主義は嫌いですか』(日本経済新聞出版社)は、そうした背景の下で書かれたたいへん面白い本だった。本書『金融危機の経済学』もそうした背景から書かれた1冊である。

ところでぼくは、この10年くらい前から、平均的な人よりも多くの経済関係の新聞記事や本を読んでいるつもりだけれど、読んでいるうちに感じることがある。それは、いろいろな本でなされている主張が全くのバラバラだということだ。星の数ほどたくさんいる経済学者やエコノミストの主張の中には、共通点は限りなくゼロに近いのではないろうか。

こうした状況の中で、各論者の論説に振り回されることなく、世の中でいったい何が起きているのかを見定めるためには、自分の共鳴できる1人または数人の少数の経済学者の論説のみを読み、他の論者はシャットダウンしてしまうことが重要なのではないだろうか。その少数の経済学者のみを信頼し、その人の目を通してグローバル経済で何が起きているのかや、今後の展望を把握するという方法だ。

本書の著者岩田教授は、ぼくが共鳴できる経済学者の1人だ。岩田氏の本を最初に読んだのは、90年代半ばにちくま新書から出た『経済学を学ぶ』だったと思う。しかし何と言ってもいちばん印象に残ったのは、2000年代初頭に出た『デフレの経済学』(東洋経済新報社)だった。日本でのバブル経済の崩壊とその後の不況について、資産デフレの観点から解き明かした同書は、たいへん説得力のあるもので、ぼくは読んでいた目から鱗が落ちる思いをした。
その後、『日本経済を学ぶ』『「小さな政府」を問いなおす』(ともに、ちくま新書)と岩田教授の書いた本を読んできた。

さて本書『金融危機の経済学』は、サブプライム・ローンを含む住宅担保証券の仕組みを解説するところから始まっている。この個所は上記の竹森俊平『資本主義は嫌いですか』でも述べられたところだが、竹森氏の方がやや理解がしやすいのではないだろうか。
次に米国に発しヨーロッパに及んだ世界金融危機が、時系列を追って解説されている。著者は金融危機の原因を投資銀行のレバレッジの過大化による資産膨張と、その崩壊に求めており、この点は新興国の資金流入を重視する竹森氏と見解を異にするようだ。
そして今後の金融システムの安定化のため、ブームが増長するにつれてレバレッジの比率が下がる結果をもたらすような規制を導入することを提案する。

戦後最悪とも、100年に1度とも言われるグローバル経済の不況について、理解を深めるための格好の1冊だと思う。







金融危機の経済学
東洋経済新報社
岩田 規久男

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