吉川徹『学歴分断社会』(筑摩書房)

吉川徹『学歴分断社会』(筑摩書房=ちくま新書)という本を読み終えた。著者の吉川(きっかわ)氏は1966年生まれ、現在、大阪大学大学院人間科学研究科准教授である。本書は、本年2009年3月10日の刊である。

ところで今、「学歴」というものについて、どのような印象が持たれているだろうか。今は昔と違い、実力社会だから、「高卒」「大卒」あるいは「A大学卒」「B大学卒」のような学歴は、昔のようには大きな意味がないという印象が強いのではないだろうか。

著者の吉川氏は、このようなイメージに異を唱える。現在日本では、所得・雇用・意欲・地域等、いろいろな側面で「格差」の存在することが問題視されているが、実は「学歴」こそが正規の格差の生成装置だというのだ。
すなわち、今日の日本社会は、高卒か大卒かという分断線で分けられた「学歴分断社会」であるというのである。

たとえば、127~128頁に次のような記述がある。

「かつての日本社会で学歴は、初めての仕事に就くときには評価の対象になっていたのですが、それ以降はさほど重視されることはありませんでした。どんな学校を出たのかではなく、入職してからどれだけ成果を上げたかが、昇給・昇進にかかわる評価の対象になっていたからです。(中略)
けれども昨今の雇用の流動化は、男女や既婚・未婚を問わず転職や再雇用が繰り返される状況をもたらしています。これは言い換えれば、一生のうちに個人が履歴書を書く回数が増えるということです。(中略)このような時代の変化が、いわば「学歴証書」である中卒層や高卒層には度重なるデメリットをもたらし、大卒層にメリットをもたらすのです。
というわけで、職業生活が多様化すればするほど、こうした事情に左右されない学歴が世代間の地位の関係の骨組みとして重要になってくるのです。」

職業生活だけではない。著者は、文化意識や居住関係まで、高卒か大卒かによって大きな「格差」がもたらされるとする。そして社会階層や、階層上昇・下降と学歴との関係が明らかにされる。
この階層移動と学歴の関係についての分析は、本書の白眉でないだろうか。

格差論についての本は世の中にあふれている。しかし本書は、「学歴」という見地から格差論に切り込んだ、新鮮ですぐれた書だと思う。



学歴分断社会 (ちくま新書)
筑摩書房
吉川 徹

ユーザレビュー:
なるほど偏差値の高い ...
すぐ善悪に結び付けな ...

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック