森絵都『風に舞いあがるビニールシート』(文春文庫)

森絵都『風に舞いあがるビニールシート』(文春文庫)という短編集を読み終えた。
本書は『器を探して』『犬の散歩』『守護神』『鐘の音』『ジェネレーションX』、それに表題作『風に舞いあがるビニールシート』の6作が収録されている。

各作品の主人公は、『器を探して』がオーナーパティシエの女性秘書、『犬の散歩』が捨て犬保護のボランティアをしている主婦、『守護神』が大学の二部に通っているフリーター、『鐘の音』が仏像修復師、『ジェネレーションX』が商品のクレーム処理に向かうサラリーマン、『風に舞いあがるビニールシート』は国連難民高等弁務官事務所に勤める女性である。典型的なサラリーマンやOLや主婦や学生ではない。
どの主人公もしっかりとした自分の価値観を持っている。世の中の流行に流されるだけの毎日を送っているのではない。本の裏に「自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きている人々を描いた6編」とあるが、その通りだ。

そしてどの作品も、森絵都さんにしてはストーリーに趣向を凝らしているのではないだろうか。中にはミステリーのように意外な結末が用意されている作品もある。
どの作品も描写が良いし、感性はみずみずしい。読後感はどの作品もすごく良い。
ぼく個人としては、気まぐれで自分中心のオーナーパティシエに翻弄されているように見えて、実はその手綱をしっかりと握っている女性秘書を描いた「器を探して」がいちばん好きになった。
しかし他の作品を挙げる人も多いと思う。6作のどれもが良質の好作品なのだ。

読んだ人の誰もが好きになる、非常にすぐれた作品集だと思う。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

ナイス ナイス

この記事へのコメント

2009年04月30日 07:58
こんにちは。
森さんの直木賞受賞作ですね。
力のこもった短編ぞろいの一冊だと思います。
最近出た「架空の球を追う」は、
もう少し力の抜けた、エッセイ風の掌編集で
これもなかなか面白かったです。
ただ、森さんの作品といえばやはり
「DIVE!」ですね。
2009年05月01日 05:56
木曽のあばら屋さん
コメントを頂き有り難うございます。
仰るとおり「風に舞いあがる…」は直木賞受賞作ですね。
今、森さんの「ラン」という文庫化されていない近作を読んで
いるところです。
「DIVE!」は木曽のあばら屋さんのイチオシでしたね。
これは息子が読んで既に家にあるので、私も近々読むつもりでいます。
fumika
2009年05月27日 00:03
お久しぶりです。
息子さんはもう中2になったんですね~。
一年の成長は小学生の時とはまた違いますか?

私もこの本も「ラン」も読みましたみました。
息子さんはずっと森絵都さんのファンなのですね。
詳しくは覚えていませんが、「守護神」が面白かったと思います。
それと、「鐘の音」も気に入っていたように思います。
人生は一つしか選べないし、選んだ人生が幸せなのか不幸なのか分からない。
でもその人生を生きていくしかないんだぁ、って。
「器を探して」は、確か仕事と彼氏と板ばさみになる話でしたよね。
ちょっと辛い思いが残った気がします。

短編ながら読み応えがある一冊でした。
2009年05月27日 06:42
fumikaさん、本当にお久しぶりです。
コメントをいただいて嬉しいです。
息子はあっという間に中2になりました。この1年の成長
ですが、ともかく外見が変わりました。身長が伸び、妻より
も高くなってしまったんですよ。妻が150センチで小柄な
せいもありますが…。

「守護神」面白かったですね。あと「犬の散歩」も…。
「鐘の音」も悪くはないですが、設定が特殊すぎるよう
な気がしました。この辺は趣味の問題でしょうね。
「器を探して」は、オーナーが結局主人公の女性なしに
やっていけないということと、主人公が現在の恋人の許
へ戻っていくラストの意外感が新鮮に思いました。
長編「ラン」も良かったですね。

この記事へのトラックバック