ヴラフSQのベートーヴェン「弦楽四重奏曲第7番『ラズモフスキー第1番』」

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先週ライプツィヒSQのコンサートでベートーヴェン中期の傑作、弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」を聴きましたが、その時、最近自分がベートーヴェンの中期の弦楽四重奏曲をあまり聴いていないことに気が付きました。そういうことで今日は、弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」を聴いてみました。
演奏はヴラフSQ、1962年10月のSupraphonへの録音です。

3曲の「ラズモフスキー四重奏曲」は、交響曲第3番「英雄」、ピアノ・ソナタ「ワルトシュタイン」「熱情」、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」等と並び、ベートーヴェン中期のいわゆる「傑作の森」を代表する傑作です。3曲の中では、終楽章のフーガが聴き応えのある第9番「ラズモフスキー第3番」が最も演奏機会が多いと思いますが、個人的には3曲は全く甲乙つけがたいほどに好きでいます。

さてこの弦楽四重奏曲第7番ですが、冒頭のチェロの雄大な開始を聴いただけで、ベートーヴェンが全く新しい世界に足を踏み入れたことが分かります。スケール雄大な第1楽章だけでなく、第2楽章もスケルツォとしては内容が濃いですし、第3楽章アダージョの表情の豊かさを聴いていると、ベートーヴェが、自身の作品18の初期弦楽四重奏曲から大きく飛翔し、ハイドンもモーツァルトも創作しなかったスケールの大きい充実した作品に到達することができたことを実感できます。

今日聴いたのはヴラフSQの演奏です。録音当時のメンバーは次の通りです。

 ヨゼフ・ヴラフ(第1vn)
 ヴァーツラフ・スニーティル(第2vn)
 ヨゼフ・コドウセク(va)
 ヴォクトル・モウチュカ(vc)

このヴラフSQの演奏が非常に個性的な名演なのです。まず第1楽章をやたらとスケールを大きくしないで室内楽的の演奏している点が好感が持てますし、第2楽章でテンポを抑えてはつらつとした表情を見せているのは立派だと思います。
第3楽章は非常に繊細で叙情的な表情豊かな演奏です。
第4楽章もテンポを抑えてあまり高揚することなく、叙情的で表情が豊かです。時々ドヴォルザークの弦楽四重奏曲を聴いているような気持ちにさせられるほどです。

ぼくがこの演奏を初めて聴いたのは2004年に国内盤が出た時ですが、こういうベートーヴェンもあるのかと驚き、感動しました。ラズモフスキー四重奏曲をこのように叙情的に演奏した団体はこれまで聴いたことがなかったですし(その後もないです)、こういう演奏が可能であったこと自体が驚きでした。
70年代、80年代には、チェコのカルテットというとスメタナSQの人気が絶大でしたが、このヴラフSQや第1vnがトラヴーニチェクだった時代のヤナーチェクSQなど、他にも個性的なすぐれた団体はいろいろあったと思います。ヴラフSQは60年代にベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を完成させたらしいのですが、この全集など、そもそもCD化されたことがないのではないでしょうか。もしCD化されたら、すぐさま入手すると思います。

このヴラフSQの演奏が弦楽四重奏曲第7番のマイ・ベストかというと、それはちょっとためらいますが、ベスト・スリーに入れたいほど気に入っています。


追記 本曲については、過去にタカーチSQによる演奏の記事を書いたことがありました。その時の記事を自己TBします(9月8日)。

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この記事へのコメント

2009年08月01日 08:15
アルトゥールさま お早うございます~

谷中ぎんざの写真でしょうか?
坂道になっているようですね

カルテットの活動、最近は下火になっているのでしょうか?カルテットの演奏にピッタリなホールは色々とできてきているように思うのですが~。

ヴラフ四重奏団 全く知りませんでした。
チェコの団体は優秀な団体が多かったですよね、今はどうなっているのでしょうか?東の体制下の方が音楽活動は盛んであったような気までします。
西側の団体に押されているようにも思います。

是非聴いてみたいと思っています。
ミ(`w´彡)
2009年08月01日 09:59
rudolf2006さま
コメントを頂き、有り難うございます。
写真はお察しの通り谷中銀座です。その入口なんですよ。よくご存知ですね。
カルテットの活動ですが、最近ABQをはじめ、ガルネリSQ、
フェルメールSQ、リンゼイSQとビッグなカルテットの解散が
続いています。世代交代の時期なのかもしれません。

ヴラフSQはいいですよ~。70年代のチェコのカルテットといえば
スメタナSQの独壇場でしたが、ヴラフSQはその影に隠れていたのかも
しれませんが、洗練されたスタイルのすぐれた団体でした。ドビュッシー
/ラヴェルが特に良かったです。
当時のチェコの団体はヴラフSQ、スメタナSQ、プラハSQは解散し
ました。ヤナーチェクSQはメンバーを変えながら今も存続しています。
ヤナーチェクSQは現メンバーの実演を聴いたことがありますが、
たいへん良かったです。
現在のチェコは、パノハSQ、ターリッヒSQ、プラジャークSQ、
マルティヌーSQなどが活躍していますが、私が実演を聴いたことがある
のはパノハくらいで、これらの団体はこれから聴いていこうと思って
います。
なおNAXOSからドヴォルザークのCDを出しているプラハ・ヴラフ
SQというのがあります。これはヨゼフ・ヴラフの実娘が主催している
団体ですが、ブログ記事で取り上げたヴラフSQとは別の団体です。

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