竹森俊平『中央銀行は闘う』(日本経済新聞出版社)

竹森俊平『中央銀行は闘う』(日本経済新聞出版社)という本を読み終えた。
著者の竹森氏は1956年生まれ、現在、慶應義塾大学経済学部教授である。
竹森教授は、一昨年2008年に同じ日本経済新聞出版社から『資本主義は嫌いですか』という著書を上梓している。今回の『中央銀行は闘う』は、竹森氏はそのように書いていないが、内容的に『資本主義は嫌いですか』の続編に当たるものである。

『資本主義は嫌いですか』はサブプライム・ローンの不履行に始まる世界金融危機を解説した本で、たいへん興味深く、エキサイティングな内容だった。本ブログでも取り上げたことがある。
『中央銀行は闘う』は、直接にはギリシャ発の欧州危機を受けて書かれたものだが、世界金融危機の後日譚というべき内容が含まれている。その意味で『資本主義は嫌いですか』の続編といえよう。

本書は、EU(欧州連合)というものが、経済の論理とも政治の論理とも相容れないという、ある種、衝撃的な指摘から始まる。
経済の論理と相容れないとは、EU各国の中には、当然、好況の国もあれば不況の国もあるはずなのに、通貨を統合してしまうと、好況の国の中央銀行が引き締め政策を取り、不況の国に中央政策の緩和政策を取って、為替レートを変動させることにより、好不況を調整することができなくなる、というものだ。
政治の論理と相容れないとは、欧州全域で政治を共有するという各国国民の意思が存在しないことだ。

ここからギリシャ危機がなぜ起きたかという原因の解明に始まり、「マジック・ナンバー」という興味深い概念が提示される。
「マジック・ナンバー」とは各国の名目金利マイナス名目成長率のことである。マジック・ナンバーがプラスの国では財政破綻の危険があり、マイナスの国では不動産バブルの危険があるという。
EU諸国やアメリカ、日本の1990年以降の統計から、著者の指摘が正鵠を得ていることが分かる。日本に関して言えば、マジック・ナンバーは一貫してプラスであり、90年以降バブルが起こらず、財政破綻の危機に瀕しているのも当然である。

その他にも、一時は経営危機に瀕したアメリカの大手投資銀行が業績が急回復した理由や、中央銀行の役割の変化(本書の書名はここから取られている)、EU内の経済大国・ドイツの経済大国であるが故の苦悩など、興味津々のテーマが続出する。

筆者の筆致は、前書『資本主義は嫌いですか』と同様、読みやすく、分かりやすい。

『資本主義は嫌いですか』は2008年度のビジネス書ランキングの上位に入った記憶している。
本書『中央銀行は闘う』もビジネスマンには是非読んでもらいたい1冊だ。

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