鈴木亘『社会保障の「不都合な真実」』(日本経済新聞出版社)

鈴木亘『社会保障の「不都合な真実」』(日本経済新聞出版社、2010年7月15日刊)という本を読み終えた。
著者の鈴木氏は、1970年生まれ、現在、学習院大学経済学部経済学科教授、社会保障問題が専門とのことである。

育児、貧困、年金、介護といった社会保障の各分野で、現在いろいろと問題が生じていることが、多くのメディアによって報じられている。
しかし、実際にどのようなことが問題になっているのか、きちんと具体的な数字を挙げて論じているメディアは意外に少ないのではないだろうか。
また管首相は「強い経済、強い福祉、強い財政」と唱えているが、政府が具体的にどのような施策を講じようとしているのかは、ほとんどの国民には分からないだろう。

本書は、子育て、貧困、年金、介護、医療、社会保障財政の各章に分けて、それぞれの分野で現在どのような問題が生じているのか、分かりやすく説明した貴重な書である。
また各分野ごとに著者による解決のための提言がなされている。たとえば子育てであれば、保育所の参入制限を緩和して保育所を増やし、「子ども手当てのバウチャー化」をする等である。

各章で説得力のある提言がなされているにもかかわらず、著者の論調は悲観的だ。その理由は、どの分野でも既得権益層が強固に存在し、彼らから権益を奪うことは容易ではないからだ。

本書で述べられた問題はぼくのような中年層はすでに直面しているわけだが、若年層も年を取るとやがては直面し、全国民が直面しなければならない問題である。
また本書を読むと現状は既に危機的で、待ったなしの改革が今すぐにも求められていることがわかる。

政治関係の本なら書店に行くと山のように積まれている。
だが本書は、あまりスポットが当たらないが、全ての国民がやがては直面する社会保障という重大な分野について包括的に一般人向けに論じた、貴重な書だといえる。

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この記事へのコメント

rudolf2006
2010年10月08日 05:29
アルトゥールさま お早うございます~

日本の社会は溶解し始めているようにも思いますね、社会保障どころか司法も行政も~;; 哀しいですが、この現実を見据えて何をしていけばよいのか、考えていかないといけないのでしょうね~。

年金問題に関しては、スウェーデン型に早く切り替えないとどうしようもなくなると思っていますが~。政治家は寝ぼけていますからね;;と、嘆いているだけではダメなんでしょうね~。

でも、一個人に何ができるのか、果たして
悩ましいです

いつも良い本を紹介してもらっております
▼・。・▼
2010年10月08日 22:37
rudolf2006さま
こんばんは!
コメントを頂き、有難うございます。

日本は本当に崩壊への道を辿りつつあるのかもしれません。
大阪地検の前代未聞の不祥事、民主党政権の外交力のなさ、
悪いニュースばかりですね。

高福祉・高負担のスウェーデン型福祉社会は、私も1つの選択肢として
考えられると思います。私が最近読んだ本では、神野直彦『「分かち合い」
の経済学』(岩波新書)という本がスウェーデン型社会を唱えていました。
しかし本書『社会保障の「不都合な真実」』は、人口減少・高齢化の日本
では、スウェーデン型はうまくいかないとして否定的なのですよ。
ともかくデフレから脱却し経済を成長にのせないと、改革は何も実行でき
ないような気がします。

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