野口悠紀雄『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)

東日本大震災の発生から3ヶ月半が経過した。大震災の発生を踏まえて日本経済をどのような方向に進めていくべきか、少なくない経済学者等の著作が出ているようだ。
ぼくは大前研一『日本復興計画』(文芸春秋)、岩田規久男『経済復興』(筑摩書房)、それに本書・野口悠紀雄『大震災後の日本経済』の3冊を読了した。

野口教授の著作は、これまで本ブログで『資本開国論』(ダイヤモンド社)を取り上げたことがある(下記の自己TBをご参照下さい)。実はその後、ブログ記事にはしなかったが、『資本開国論』の後も、『経済危機のルーツ』(東洋経済新報社)、『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』『日本を破滅から救うための経済学』(いずれもダイヤモンド社)と3冊の本を読んでいた。
いずれの本も、日本はコスト競争力で新興国に勝つことはできないのだから、製造業は思い切って新興国にシフトしてしまい、金融業、サービス業に立脚した国づくりを目指すべきだという野口教授のかねてからの主張に基づいて書かれていたように思う(テーマはそれぞれの本で違うが)。

本書『大震災後の日本経済』は、大震災の発生をきっかけに新しい日本に作り変えようという観点から書かれた書下ろしである。

著者の野口教授は、大震災をきっかけに日本経済は大きく転換したという。
震災前の日本経済は需要不足に悩まされてきた。しかし震災により、生産設備や社会資本や住宅が崩壊・損傷した。これによって今後は需要ではなく供給面に制約がかかるようになるということだ。

特に深刻なのは(夏の)電力不足である。野口教授は電力不足に対しては、計画停電ではなく、基本料金の引き上げや料金への課税によって対応すべしという。
また今後の電力供給の制約は、企業の生産活動に大きな制約をもたらすことになる。復興需要が発生したのに、供給面での制約により、需要にこたえることができないことになる。
生産活動を東日本から西日本に移転させることも考えられるが、うまくいくかどうか、分からない。電力需要の大きい製造業の比重を下げ、サービス産業にシフトするのが合理的な解決策といえる、…と著者の主張は続く。

また復興財源を国債発行によってまかなうことにすると、金利が上昇し、ただでさえ苦しい国の財政がいっそう悪化してしまう。インフレによって処理するほかなくなるかもしれない。復興財源は増税でまかなうべきである、という。

そして今後、原発新設が不可能又は困難になった以上、日本は省エネ型経済構造に転換する他はなく、そのためには電力消費の大きい製造業は西日本に移転し、東日本ではサービス産業を振興すべきだと主張する。

以上から分かるように、本書は、これまでの野口教授の著作と同様、日本は製造業からサービス業を中心にした経済構造に転換すべしとの主張に基に、今回の大震災をこのような転換を行うチャンスと捉えよというものである。野口教授のこれまでの著作を読んだことのある人なら、すんなりと頭に入る内容ではないだろうか。

しかし最近の民主党政権の迷走を見ていると、野口教授の提言を取り入れるような状況ではない。野口氏だけでなく、大前研一氏も岩田氏もそれなりの提言しているのだが、政府も与党も野党も、復興ではなく、菅政権の延命や打倒を第一に考えているようだ。
今回の大震災も、野口教授の言うように、それをきっかけに20年に及ぶ不況に悩まされてきた日本の構造を変革する1つのチャンスと捉え、経済・財政構造の抜本的な行うべきなのだが、政治の不毛がそれを妨げているのが現状なのであろう。





大震災後の日本経済ーー100年に1度のターニングポイント
ダイヤモンド社
野口 悠紀雄

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