岩田規久男『ユーロ危機と超円高恐慌』(日経プレミアシリーズ)

この3連休に岩田規久男『ユーロ危機と超円高恐慌』(日本経済新聞出版社=日経プレミアシリーズ)という本を読み終えた。
著者の岩田氏は、1942年生まれの学習院大学経済学部教授で、多数の著書がある。
上記の書は3日間まるまるかけて読んだわけではなく、新書サイズの上、内容が興味津々ということもあって、数時間で読み終えることができたように思う。

ぼくは、かつて、本ブログに以下のような趣旨のことを書いたことがある。

世の中に経済学者とかエコノミストと称している人は山ほどいるが、彼らの主張の中の共通点は限りなくゼロに近い。百人が百人ともばらばらなことを言っている。
このように状況の下では、我々読者としては、1人でよいから、自分の納得できる主張を述べている、信頼できる経済学者を見つけ、もっぱらその学者の立場から経済問題を考察するのがよいのではないだろうか。

そして、ぼく自身は、2000年代の初頭に岩田規久男『デフレの経済学』(東洋経済新報社)という本を読んで以来、岩田教授をそのような経済学者として選んでいる。

岩田教授の著書は一昨年9月の本ブログで、『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)という本を記事にしたことがある。それ以降、ブログ記事にしなかったが、『デフレと超円高』(講談社現代新書)、『経済復興』(筑摩書房)の2冊を読んだ。
本書『ユーロ危機と超円高恐慌』はそれらに続いて読んだ本である。


本書ではまず、ギリシアの債務危機の進行と、それに対するEU(ヨーロッパ連合)各国やECB(ヨーロッパ中央銀行)の対応が、日を追って述べられている。
そしてギリシアを始めとする南欧諸国が債務危機に陥った原因、すなわち2008年のリーマン・ショックによって世界的な民間の信用収縮が起こり、各国が景気回復のために大量の国債を発行したことが今回の危機につながったことが分かりやすく解説されている。
そして岩田教授は、欧州中央銀行(ECB)が金融緩和し、目標インフレ率を4%に設定するという解決策を提示している。

しかし本書はそれに止まらない。非常に恐ろしい予測が述べられている。
それは概ね次のようなものだ。

経済学では「最適通貨圏」という理論がある。
この理論によれば、労働や資本といった生産要素が比較的少ない費用で移動できる範囲が、共通の通貨を使用すべき範囲になる。
しかし岩田教授によれば、現行のユーロ17か国はその範囲ではないという(最適通貨圏の範囲は、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの5ヶ国だという)。その理由は、ユーロ発足後、欧州各国の間も移民(=労働)が増えていないからだ。 移民には、当局者の想定以上のコストがかかるということだ。
そうだとすれば、平時から、財政条件の悪い国を財政条件の良い国が支援することが可能な仕組みを構築しておくしかない。
しかし、今回のような緊急時だけでなく、平常時から多国間で所得を再分配をするような仕組みを作るということは、事実上、慢性的に財政条件の悪い南欧諸国を、伝統的に財政条件のよいドイツ、フランス、オランダ等が常に支援することになってしまう。
ドイツ、フランス、オランダ等は、それに納得するであろうか。

このような根本的な問題点から示唆されるのは、著者ははっきりと明言しているわけではないが、たとえ今回の危機を乗り切ったとしても、やがてユーロは崩壊するだろうということである。

以上に加えて、本書の後半部分で、現在の日本の不景気は日銀のデフレ容認政策のせいであるという、著者の前作『日本銀行は信用できるか』『デフレと超円高』(ともに講談社現代新書)等で述べられた持論が再び述べられている。著者の日銀に対する怒りは頂点に達したようだ。

年が明けて、ユーロ安の進行は一向に止まらない。
本書はユーロ危機と無関係ではいられない日本のビジネス・パーソンにぜひお勧めしたい1冊である。

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