バックハウスのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第30番」

9月初めというと、例年残暑の厳しい時期です。しかし、今日の東京は気温が低く雨模様の1日です。
今日は、ウィルヘルム・ バックハウスの演奏するベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番を聴きました。1962年の録音です。バックハウスの本曲2回目の録音です。

ソナタ第30番は、ベートーヴェン後期3大ソナタの最初の曲ということになります。3楽章編成ですが、変奏曲形式で「歌うように、心の底からの感動を持って」という指示のある第3楽章が全体の3分の2を占めています。
本曲は、心優しく、どこかこの世の音楽でないような第1楽章で始まります。聴いてすぐに ベートーヴェン後期の作品だと分かります。急速で、短く、第1・3楽章の橋渡しのような第2楽章を経て、本曲の白眉である第3楽章に入ります。
第3楽章ですが、まるでベートーヴェンが自らの来し方をしみじみと振り返っているような深い感情の吐露が感じられます。単に自分の人生だけではありません。人類全体、世界の来し方行方に思いを馳せているかのようです。また、彼の優しい気持ちが伝わってきます。ベートーヴェンのソナタ第31番第3・4楽章、第32番第2楽章とともに彼のピアノ作品の中で最も感動的な楽章だと思います。

バックハウスの演奏は、驚くほど淡々とした演奏です。第1楽章などテンポが早く、味気なく感じられるほどです。第3楽章は、テンポはそれほど早くないのですが、非常に淡々としていて「歌うように、心の底からの感動を持って」というベートーヴェンの指示に反するかのような演奏です。ここまで工夫というものをせずに淡々と弾いていると、これはこれで、高齢のピアニストにしか出すことのできない一つの芸だと感じられます。
バックハウスは生涯を通じて謹厳実直を貫いたピアニストでした。ベートーヴェンの指示がどのようなものであれ、たとえ内心に深い感情があったとしても、それを表面に出すことは彼の流儀ではなかったのでしょう。

聴いていて感動させられるのは、音の美しさです。ベーゼンドルファーのピアノを使用した柔らかく包み込むような音色で、汚い音などは一音たりともありません。本バックハウスの演奏の最大の魅力は、この音の美しさではないか、と思ったりしました。

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