エリーザベト・レオンスカヤ・シューベルト・チクルス第2日(4月6日)

昨日4月6日(金)、東京・上野の東京文化会館小ホールで行われたエリーザベト・レオンスカヤ(p)のシューベルト・チクルス第2日目を聴きに行ってきました。
レオンスカヤは1945年ジョージアのトビリシ生まれのピアニスト。1978年にウィーンに生活の本拠を移しています。今年で73歳になることになります。
管理人は、本ブログ休止中の2015年3月にレオンスカヤの来日公演を聴いたことがあり、レオンスカヤを生で聴くのは2回目でした。その時はボロディン弦楽四重奏団との共演で、曲はシューマンとショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲でした。
今回の来日公演は、東京文化会館で行われる「東京・春・音楽祭」の一環として、シューベルトのピアノ・ソナタ全曲(完成した楽章のある曲のみ。「さすらい人」幻想曲も演奏される)を6日間に分けて行うもので、管理人が聴きに行ったのはその2日目でした。
プログラムは次の通りでした。

ピアノ・ソナタ第9番 ロ長調D575
ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調D840「レリーク」
(中休み)
ピアノ・ソナタ第18番 ト長調D894「幻想」

ソナタ第18番がメインのようです。

まず、ソナタ第9番ですが、これは管理人にとって聴き慣れない曲でした。管理人はウィルヘルム・ケンプとアンドラーシュ・シフのシューベルトのソナタ全集を持っているので、この曲を聴いたことがあるはずですが、記憶に残っていませんでした。またそれ以外にクラウディオ・アラウ、アルフレート・ブレンデル、ラドゥ・ルプーのソナタ選集も持っていますが、アラウ、ブレンデル、ルプーは9番を録音していないように思います。昨日レオンスカヤの演奏で聴いても、第2楽章でインスピレーションを感じさせる部分はあったものの全体的に冗長な感がありました。プログラムによるとシューベルト20歳の時の作品らしく、シューベルトの器楽曲の分野での才能が開花する以前の作品なのでしょう。

これに対して、次のソナタ15番は、第2楽章までしか完成していない未完成の曲なのですが、かなりの名曲なのではないでしょうか。非常に深く暗い曲だと感じます。
シューベルトらしい歌謡生・叙情性は感じられ、第2楽章で薄明かりは見えるのですが、全体としては絶望的なまでに暗い曲という印象があります。次のソナタ作品である第16番D845に通じるものがあります。また弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」に通じる曲想でもあります。「ロザムンデ」弦楽四重奏曲は終楽章で明に転じましたが、 もしこのソナタ15番の第3楽章・4楽章が書き継がれたら、どのような曲になっていたのでしょうか。

休憩を挟んで、ソナタ第18番「幻想」は管理人が愛して止まない曲です。シューベルトの全作品の中で最も好きなのがこの曲かもしれません。レオンスカヤのシューベルト・チクルス6日間の中で、第2日目のチケットを求めたのは、この曲がプログラムに含まれていたからなのです。
話が少し脱線しますが、シューベルトのピアノ・ソナタというと第19番、第20番、第21番の3曲が「後期3大ソナタ」という呼び方をされているようです。しかし管理人は「後期3大ソナタ」よりも、その前の3曲、すなわち第16番、第17番、第18番の3曲を好んでいます。
ソナタ18番は、「幻想」というニックネームの通り幻想的で、叙情的で、この世とは思えない歌謡的な美しさに溢れた曲です。また美しさだけでなく、この曲でも何かの深淵を感じさせる曲想が現れています。全くシューベルトにしか書くことのできなかったであろう曲です。

レオンスカヤの演奏ですが、管理人がまず感じたのは、ピアノがヤマハ製だということでした。スタインウェイやベーゼンドルファーよりも豊かで温かみのある音色です。最近流行の(?)フォルテピアノとは対極にあるような音色です。
そう言えば、レオンスカヤと同じ旧ソ連出身でレオンスカヤとしばしば共演したという大ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルもしばしばヤマハ製のピアノを弾いていました。レオンスカヤもリヒテルと同様、ヤマハの音を好んでいるのかもしれません。
演奏はリヒテルを思い起こさせるような力強いものでしたが、リヒテルほどのスケールはなく、かといってデリケートにもならず、むしろ淡々と弾いている感がありました。第15番は淡々とした演奏のせいでかえって曲の絶望的な暗さがクローズアップされているように感じました。
またソナタ18番はもっとデリケートな演奏、或いはピアニストの個性を打ち出した演奏が多いように思いますが、レオンスカヤの演奏は、淡々と、ベタッベタッと弾いているため、曲のこの世とは思えない幻想性がよく現れていたように思います。

なお、アンコールは、シューベルトの3つのピアノ小品D946の第1曲でした。

レオンスカヤの演奏は、最近の流行と思われるフォルテピアノによる演奏とは反対に、ピアノの表現力を生かしたもののように感じました。刺激とか面白味に乏しかったのかもしれませんが、管理人のようにクラシック歴40年オールド・ファンにとっては安心して聴くことのできる演奏なのです。
管理人にとっては満足の一夜でした。




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