カガン/リヒテルのブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番『雨の歌』」

今日9月30日は非常に大型の台風が日本列島を縦断するという予報が出ています。午前の時点で既に、九州南部では暴風・停電などの被害が出ているようです。台風は夜、首都圏に到達するようです。

今日の1曲は、台風にちなんだわけではありませんが、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調作品78「雨の歌」です。演奏はオレグ・カガン(vn)とスヴャトスラフ・リヒテル(p)です。1986年9月20日の宮城県の中新田バッハ・ホールでのライブ録音です。管理人が今日聴いた録音は日本のオクタヴィア・レコードから発売されているものです。

さてブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番は1879年に作曲されています。ヴァイオリン協奏曲が作曲された直後の作曲で、交響曲第2番やピアノ協奏曲第2番と同時期の作品です。ブラームスが、彼の生涯で最も油の乗っていた時期の作品ということになります。
しかし本曲を聴いていて感じるのですが、ヴァイオリン協奏曲や交響曲第2番が晴朗な美しい作品だったのに対し、本曲は内省的で、ブラームスらしいほの暗いロマンと憂愁が感じられます。油の乗った時期のブラームスといえども内面がもっぱら平穏で幸福だったのではなく、どこかに憂愁を抱えており、そのことが本曲を通じて現れているのではないでしょうか。
「雨の歌」というニックネームは、本曲の第3楽章に歌曲「雨の歌」の旋律が使われていることに由来するものですが、晴れの日ではなく雨の日にじっくり聴きたいような内面の深さが感じられるのです。その点が本曲の魅力です。

ところでブラームスは全部で3曲のヴァイオリン・ソナタを作曲しており、そのどれもが名曲ですが、その中で最も有名なのは本曲だと思います。もっとも故・吉田秀和先生は「名曲300選」(ちくま文庫)で第3番を推しておられ、管理人の好みは第2番なのですが、この辺は好みの問題だろうと思います。
また本曲はヴァイオリンをチェロに変えての演奏も実演及び録音で見受けられ、管理人はマイスキーのチェロによる録音を持っています。なるほどチェロで演奏されるのにふさわしい内省性が感じられる作品なのです。

今日聴いたカガンとリヒテルはプライベートで親密だった伝えられ、実演でもたびたび共演しており、さすがに呼吸はぴったり。リヒテルのじっくりとしたサポートを得て、カガンが、ヴィブラートをたっぷり効かせた内省的な演奏も聴かせています。本曲の性格に極めて適合した演奏です。またカガンのやや地味な音色も本曲にふさわしい、と感じます。相当な名演だと思います。

カガン(1946ー1990)は旧ソ連のヴァイオリストですが、若くして逝去したため、少なくとも日本では、大きな人気が出なかったように思います。しかし本演奏を聴く限り相当な腕で、また管理人の好みのスタイルです。
1990年代後半にリヒテルや、カガン夫人のチェリスト、ナターリャ・グートマンと共演した室内楽のライブ録音が、Live Classicsというレーベルから多数出ていましたが、管理人はそれを1枚も購入しませんでした。現在ではそのごく一部しか入手できないようです。しかし忘れられていくのには惜しいヴァイオリ二ストだと思います。
またカガンはギドン・クレーメルの1歳年長で、クレーメルと同年代の旧ソ連の同年代だということになります。長生きしてクレーメルのように西側の大手レーベルにバッハやベートーヴェンなどの有名曲を録音していればどのような評価を得ていたのだろうかと思うと、その早逝が惜しまれます。

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