「ポール・ルイスHBBプロジェクトVol.4」(10月1日)

昨日10月1日(火)、東京・銀座の王子ホールで英国人ピアニスト、ポール・ルイスの「HBBプロジェクト第4回」を聴きました。
HBBとは、ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスのことです。2017年から2019年の3年をかけて、4回にわたりこれら3人の作曲家の作品を取り上げていこうというプロジェクトです。管理人が昨日聴いたのはその4回目なので、最終回ということになります。

ハイドンの50曲以上のピアノ・ソナタは宝の山だと思いますが、一般には数曲の有名曲を除きあまり知られていないように思います。またベートーヴェンでは、ソナタではなくロンドやバガテルなど小品(今回第4回を除きます)が取り上げられており、ブラームスと合わせ、今回のプロジェクトは、あまりスポットの当たることのない曲にも良い曲があるということを、世の中に問うていこうというルイスの意欲の現れではないかと思います。

管理人がポール・ルイスの実演を聴くのは、2年ぶり3回目のことでした。前回はテノールのマーク・パドモアの伴奏ピアニストとして聴いたので、リサイタルを聴くのは、2012年にシューベルト・チクルスを聴いて以来ということになります。

昨日のプログラムは、次の通りでした。

ハイドン: ピアノ・ソナタ第34番ホ短調Op.42、Hob.XVI: 34
ブラームス: 3つのインテルメッツォOp.117
(休憩)
ベートーヴェン: ディアベッリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調Op.120

ハイドンのソナタ第34番は、彼のソナタの中では例外的に起伏に富んだ、内容の充実した作品です。特に第3楽章はダイナミックで、ベートーヴェンを飛び越えてロマン派に通じるような豊かな感情が感じられます。
次にブラームスの3つのインテルメッツォは、作品番号で分かるように彼の晩年の作品です。ブラームスの晩年の作品らしく、物悲しさと孤独と諦観が感じられ、彼の囁き声を聴いているようです。しみじみとした味わい深い作品だと思います。
休憩をはさんで、ベートーヴェンのディアベッリ・ヴァリエーションは、ベートーヴェンの全作品中屈指の名作ではないでしょうか。バッハのゴルトベルク変奏曲と共に古今の変奏曲の両横綱と評価されている同曲ですが、「ゴルトベルク」が少なくとも外見上はバロックの範囲を超えていないのに対し、ベートーヴェンの「ディアベッリ」は自由自在です。笑いあり、涙あり、深刻な表情あり、ユーモアあり、アイロニーあり、正しく千変万化の世界です。その自由な作風は、ロマン派を飛び越えて、まるで現代音楽のような前衛性が感じられます

昨日のルイスのコンサートは、このように非常に個性的なプログラムでした。

ルイスの演奏は、隅々までまで考え抜かれた緻密でデリケートなものでした。彼はアルフレート・ブレンデルに師事したということですが、確かにブレンデルの影響の感じられるスタイルです。
また彼の演奏技巧には高度なものがあります。ディアベッリ変奏曲は演奏技術上難易度の高い個所が多々ありますが、昨日のルイスの演奏は全く完璧でした。
昨日のコンサートは、ハイドンとブラームスでは曲を大きく演奏し過ぎている感がなきにしもあらずでしたが、ベートーヴェンのディアベッリ変奏曲はこれ以上考えられないほど素晴らしい演奏でした。
ルイスというピアニストは、演奏技術の面でも芸術性という点でも、今や世界的に有数の存在なのではないでしょうか。一般のコンサート・ピアニストとは演奏の「格」がまるで違います。昨日のコンサートを聴いていて、世界でも最高レベルの演奏を聴いている、と実感することができました。

なおアンコールは、ベートーヴェンの「6つのバガテル作品126」から第5曲でした。
アンコールを1曲しか弾かないことについての申し訳なさそうなルイスの表情が印象に残りました。

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