タカーチSQのシューベルト「弦楽五重奏曲」

今日の東京は曇り空の寒い1日です。冬が本格的に到来してきたことを実感させられる1日です。
今日は、シューベルトの弦楽五重奏曲ハ長調作品956を聴きました。演奏は、タカーチ弦楽四重奏団とラルフ・カーシュバウム(vc)です。2012年5月18〜21日のHyperionレーベルへの録音です。

本曲はシューベルトが生涯で作曲した唯一の弦楽五重奏曲です。有名作曲家ではモーツァルト、メンデルスゾーン、ブラームス、ドヴォルザークも弦楽五重奏曲も作曲していますが、彼らの弦楽五重奏曲がヴァイオリン2挺、ヴィオラ2挺、チェロ1挺なのに対し、シューベルトの弦楽五重奏曲はヴァイオリン2挺、ヴィオラ1挺、チェロ2挺だという相違があります。
また本曲は作品番号で分かるようにシューベルト最晩年の作品です。死のわずか2ヶ月前に完成したようです。

本曲は非常に長大です。本タカーチSQ盤で54分35秒を要します。この長大さというのは、最後の交響曲である「ザ・グレイト」D944や最後のピアノ・ソナタであるピアノ・ソナタ第21番D960と軌を一にします。
しかし本曲は、明朗な「ザ・グレイト」や静謐なソナタ21番と全く性格を異にします。古今のどの作曲家にも類例のないような、激しい作品です。

第1楽章は、本タカーチ盤で20分弱と本曲の中で最も長い楽章です。死を間近に控えたシューベルトの絶望をぶつけるかのような激烈さと悲壮感・緊張感に満ち溢れています。チェロ2挺で作曲されているため重厚味が出ています。しかしそれだけでなく、転調の妙によりシューベルトらしい心の優しさ、憧憬を垣間見ることができます。
第2楽章は緩徐楽章ですが、非常に優れた出来の楽章です。瞑想的な曲想ですが、中間部で悲壮感に満ち溢れた暗く激しい曲想となります。
第3楽章はスケルツォです。一見明るいようですが、底流には暗い感情が流れていることが容易に見て取れます。
第4楽章はハンガリーの舞踊風の楽章です。高揚して終わります。

シューベルトというと歌曲や「未完成交響曲」で見られるような叙情性・歌謡性のイメージが強いのではないでしょうか。しかし本曲を聴いていると、シューベルトにはそれとは別の一面があったことが分かります。暗く激しい一面です。
管理人は本曲をシューベルト屈指の名曲と考えています。シューベルトの本曲や弦楽四重奏曲第13〜15番は、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲と並び、クラシックの器楽曲の分野では最も深い地点まで到達した音楽なのではないでしょうか。

本録音はタカーチSQにとって本曲の2回目の録音です。最初の録音はチェロのミクローシュ・ペレーニと共にDeccaレーベルに行われています。
本2回目の録音当時のタカーチSQのメンバーは次の通りです。
エドワード・ドゥシンベル(第1vn)
カーロイ・シュランツ(第2vn)
ジェラルディン・ウォルサー(va)
アンドラーシュ・フェエール(vc)

創設時のメンバーはシュランツとフェエールの2人ということになります。

本録音がなされた2012年というと、第1vnがガーボル・タカーチ=ナジからドゥシンベルに交代したのが1993年なので、それから20年近くが経過した時期ということになります。この頃、同SQは円熟期を迎えていたのではないでしょうか。
本録音は、曲と正面から向き合った真摯な演奏です。典型的なカルテットからチェロ一挺が増えたとはいえ、スケール感を大きくするのではなく、もちろんこじんまりとまとまるのでもなく、曲の内面に沈潜していくような演奏です。名手カーシュバウムを加えたアンサンブルも万全で、本曲の名盤といえばまず取り上げられるべき名演だと言えるでしょう。

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