ムター/オーキスの演奏会(2月24日)

昨日2月24日(月・祝)、東京・赤坂のサントリーホールで、アンネ=ゾフィー・ムター(vn)とランバート・オーキス(p)(プログラムの表記はオルキス)のリサイタルを聴きました。

今年はベートーヴェン(1770ー1827)の生誕250周年のミレニアム・イヤーです。ムターはこれを記念して、サントリーホールで次の通り4回のコンサートを行いました。

2月20日(木) 協奏曲
2月21日(金) 室内楽マスタークラス
2月22日(土) 室内楽
2月24月(月・祝) リサイタル

管理人が行ったのは最終日の4日目ということになります。
プログラムは次の通りでした。

ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ第4番イ短調作品23
同: ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24「春」
(休憩)
同ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調作品47「クロイツェル」

管理人がムターの実演を聴くのは、2013年以来7年ぶり2度目のことでした。2013年に聴いた時もランバート・オーキスとのリサイタルで、モーツァルトのソナタ、シューベルトの幻想曲ハ長調D934を中心にしたプログラムだったと記憶しています。

さて昨日のコンサートですが、新型肺炎の感染拡大を受けて、聴衆の9割はマスクをしていました。管理人自身もずっとマスクをしたまま聴きました。
ムターは黒のドレスを着ての登場です。

最初のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第4番ですが、作品番号で分かるように「春」と同時期の作品です。ムターというと、豊麗な音色で自由奔放な演奏をする演奏家というイメージがあります。昨日聴いてみると、確かに美麗な音色で、ヴィブラートのかかった豊かさは健在でした。しかしソナタ第4番を聴いてみると、自由奔放というのは不適切で、丁寧にデリケートに弾いているという感想を持ちました。
続く「春」も同様です。「春」の曲想は美麗なムターとよく合いそうですが、同曲でもムターは持ち前の美音で丁寧に弾いていると思いました。もっとも、その中にも随所に自由さ・即興性が感じられます。またオーキスのピアノが、単なる伴奏に止まらずかなり自由に弾いていました。もちろん1988年以来30年以上も共演を続けている両者の呼吸はぴったりです。

休憩を挟んで、「クロイツェル」ですが、昨日の3曲の中で最も名演だったのではないでしょうか。同曲でのムターは演奏技巧は素晴らしく、あるところは丁寧にデリケートに、あるところは自由に即興的に、と自由自在です。まさに名人芸です。テンポは早めでしたが、彼女のスタイルを考えるとこのくらいのテンポがちょうど良いと感じました。同曲でもオーキスのピアノがかなり自由に弾かれ、良いと思いました。

管理人は聴いていてたいへん感動でき、素晴らしいコンサートだったと思いました。過去3年くらいの間に聴いたコンサートの中では、一昨年のマリア=ジョアン・ピリス、昨年のベルチャ弦楽四重奏団、ポール・ルイス辺りに強い印象を受けましたが、今回のムター/オーキスが最も素晴らしかったという感想を持ちました。

管理人は2階RBブロックの2列目で聴いたのですが、ムターとオーキスの表情が非常に見えやすい席でした。ムターは若々しく、驚くほど綺麗に見えました。内面の充実が外見に現れているのだろうと思います。
デビューして40年以上になるムターですが、その間に古今のヴァイオリンのために書かれた作品はバロック音楽を除きほぼレパートリーに収め、それだけでなく現代音楽にも造詣が深く、今、最盛期を迎えているのではないでしょうか。

またオーキスが絶えずムターとアイ・コンタクトを取りながら、笑顔を絶やさずに演奏しているのが印象に残りました。
管理人は以前、ムター/オーキスのベートーヴェンか何かの録音について、オーキスの演奏が伴奏に止まっており自己主張が足りないという音楽評論を読んだことがあります。これは全く不見識・不当な評論です。オーキスはムターを支え、その良さを引き出そうと努力しているのです。もし共演者がオーキス以外のピアニストであったなら、ムターの演奏もまた違ったものになったことは間違いありません。ムターはオーキスを必要としているのです。
さらにオーキスは、少なくとも昨日は「自己主張が足りない」ということはありませんでした。

なおアンコールは次の3曲でした。

ベートーヴェン: 「からくり時計」のための5つの小品より第3曲「アレグロ」
ジョン・ウィリアム: 「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」より「すてきな貴方」
ブラームス: 「ハンガリー舞曲」第1番

3曲も弾いてくれたのはサービスです。そのうえアンコールを告げるムターの話から、その人柄の良さが伝わってきました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

2020年02月26日 00:31
こんにちは、いつも大変お世話になっております。

大好きなベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの演奏会があったのですね。
ムターの演奏では聴いたことがないので、とても興味を惹かれました。

コンサートから受ける印象がとても伝わってきて、今度CDでムター盤を探してみようと思います。

いつも心からの素敵な記事をありがとうございます。
2020年02月26日 20:21
よしな様
コメントを頂き、有り難うございます。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ、「スプリング」「クロイツェル」以外も魅力的な曲が揃っていますね。個人的に作品30の3曲に惹かれるものがあります。
ムターは、自由奔放で、それが悪く出る時もあるのだろうと思いますが、先日のリサイタルは良かったです。音色と超絶技巧が彼女の武器で、それが良い方に出ればツボにはまるのだと思います。
もっとも、彼女のオーキスとの90年代のベートーヴェンが、貴ブログで取り上げておられたオイストラフ/オボーリンやフランチェスカッティ/カサドシュより良いのかというと、全然自信がありません。実演と録音とでは違うでしょうし…。