ムター/オーキスのベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第10番」

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集 - ムター(アンネ=ゾフィー), ベートーヴェン, ヘス, エルマン, ムター(アンネ=ゾフィー), オーキス(ランバート)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集 - ムター(アンネ=ゾフィー), ベートーヴェン, ヘス, エルマン, ムター(アンネ=ゾフィー), オーキス(ランバート)
今日日曜は5連休の2日目ということになります。しかし国民の大半が巣ごもり生活を余儀なくされている今年は、連休という感覚を持つことのできない方が多いのではないでしょうか。

今日の1曲は、前々回、前回のエントリーに続き、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタです。今日は第10番ト長調作品96です。
演奏はアンネ=ゾフィー・ムター(vn)とランバート・オーキス(p)です。1998年8月のライヴ録音です。レーベルはDGです。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第10番は、彼のヴァイオリン・ソナタ分野での最後の作品です。完成は1812年ですが、ヴァイオリン・ソナタ分野での前作・9番「クロイツェル」の完成は1803年のことであり、前回から10年近い歳月が経過しています。1812年というと、交響曲では第7番が作曲される直前の時期で、室内楽分野では第11番までの中期弦楽四重奏曲の作曲が終わり「大公トリオ」作品97とほぼ同時期の作品です。ベートーヴェンの作曲人生における中期が終わろうとしていた時期ということになります。

本曲は急・緩・急・急の4楽章構成を取ります。
第1楽章は平穏な落ち着いた楽章です。管理人の大好きな弦楽四重奏曲第10番「ハープ」を思い起こさせるものがあります。
第2楽章はアダージョで、静かで抒情的な美しい楽章です。ヴァイオリンが美しい旋律を奏でます。
第3楽章は短いスケルツォですが、暗→明という構図でなかなかの傑作だと思います。
しかし本曲の白眉は第4楽章ではないでしょうか。第4楽章は主題と8曲の変奏曲からなります。簡素な主題から、ヴァイオリンとピアノという2挺の楽器によって紡ぎ出される8つの変奏曲は、ユーモアあり抒情あり前衛性ありで変化に富んでいます。後年の大傑作「ディアベルリ変奏曲」を思い起こさせるものがあります。ベートーヴェンは本楽章で、彼の後期の玄妙な世界に足を踏み入れています。

管理人にとって本曲は、第9番「クロイツェル「と共にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中で最も愛好している作品です。

ムターの演奏は、主観性の強い演奏です。ただし主観派の代表のように見なされている彼女ですが、本曲では例えば「クロイツェル」の時ほど主観的ではないと思います。
大きなヴィブラート、弾き崩し、テンポ感の変化などに彼女の個性が出ていますが、(少なくとも管理人は)丁寧にデリケートに演奏していると感じる個所が多々あります。
また1990年頃から本録音を経て今日2020年に至るまで彼女の演奏パートナーを続け、堅い信頼関係で結ばれているオーキスのピアノは、彼女が最大限に個性を発揮できるようなサポートを心掛けたもので、見事です。オーキスの伴奏を個性に乏しいなどと言うのは不見識の誹りを逃れません。
もっとも本曲が中期の終わり頃の作品で、第4楽章に見られるように後期の要素をも持っている性格を考えると、もう少し誠実きっちり型の演奏の方が曲に相応しいように思いますが…。

ところで前回のエントリーで、管理人がベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集を9種類持っていることを記しました。その9種類の中で最も新しいのが、この1998年録音のムター/オーキス盤です。ということは管理人は21世紀に入ってからの録音を一つも持っていないことになります。
この点は最近のものも聴いてみたいという気持ちはあるのですが、最近の演奏家はどういう人がよいのかよく分からないのが本音です。
「レコード芸術」誌ではイザベル・ファウスト、アリーナ・イブラギモヴァと女流ヴァイオリニストの演奏盤の評価が高いように思います。ファウストの方は管理人自身、実演でベートーヴェンの演奏を聴いたことがあります。しかしレーベルがファウストはHarmonia Mundi、イブラギモヴァはHyperionで、共に値段の高いレーベルのため購入を躊躇っている間に今まできた、というのが実際のところです。

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