『小沢一郎 闘いの50年』(岩手日報社)

小沢一郎 闘いの50年 半世紀の日本政治を語る - 岩手日報社
小沢一郎 闘いの50年 半世紀の日本政治を語る - 岩手日報社
『小沢一郎 闘いの50年』(岩手日報社)という本を読み終えた。本書は本年2020年4月15日の新刊である。
小沢一郎氏(1942(昭和17)年5月24日生まれ、現在77歳)が衆議院選挙に初当選したのは、1969(昭和44)年12月だった。昨年12月で衆議院議員在職50年を迎えたことになる。本書はその節目の企画として、地元岩手の岩手日報社の榊悟記者(編集委員)が計23回、1年以上にわたりロング・インタビューを行い、書籍として出版したものである(本書「あとがき」による)。

小沢一郎氏というと、多くのマスコミから「剛腕」「壊し屋」というレッテルを貼られている。多くの日本人にとって、2009年から12年にかけての民主党政権が失政により国民を苦しめた時の戦犯というイメージが強いように思う。また民主党政権の崩壊後は鳴かず飛ばずで、今では「過去の人」感を抱いている国民が多いようにも思う。

しかし平成の初めはそうではなかった。小沢氏は1989(平成元)年に47歳の若さで自民党No.2の幹事長に就任し(現在の二階俊博自民党幹事長が80歳だから、当時の小沢氏がいかに若かったかがわかる)、実力派幹事長として自ら米国との外交交渉を行っていた。将来を嘱望される若手政治家だったのである。
管理人は当時の政治の表面に現れ始めた頃の小沢氏のことを覚えている。(特に当時ライバル視された橋本龍太郎氏と比べて)外見が爽やかでないということと、弁才が豊かでないということを感じた。むしろ口下手な方だろうと思った。しかし話の中身はたいへん正論だと思ったのを覚えている。
1990年代の初め、小沢氏は『日本改造計画』(講談社)という著作を出版した。後々に考えると新自由主義の政策を述べたものだった(ただし当時は「新自由主義」という言葉は一般に使われていなかった)が、管理人はそれを読んで共鳴した覚えがある。管理人は小沢氏に期待した時期があったのだ。

それから以降の小沢氏については、ある程度の年齢以上の日本人なら記憶しているだろうと思う。1993(平成5)年の細川非自民政権と2009(平成21)年の民主党政権の2回にわたり非自民政権の誕生を成し遂げながら、いずれも短命に終わり、現在は国民民主党に所属しているようだが、パッとしない立場にいるわけである。

本書は小沢氏の50年にわたる政治家人生が、時系列を追って回顧されている。特にどの時代にポイントが置かれているということはない。氏は、50年前の初当選と小沢氏が師と仰ぐ田中角栄氏との出会いから現在に至るまでの足跡を、どこに重点を置くこともなく回想している。
管理人が忘れていた事実や新たに知ったような裏話も多く、小沢氏の本音が多く聞かれ(ただし小沢氏側から見た話だということを割り引かないといけない)、たいへん興味深く、一日で読み切ることができた。小沢氏からうまく裏話や本音を聞き出した榊氏の手腕は優れている。政治家の回顧録としてはすぐれた出来栄えの良書である。

本書を読んで感じたことはいろいろあるが、重要と思われる点にポイントをしぼって述べてみたい。
第一に、政策面が弱いのではないかということである。本書を読んで小沢氏が二大政党による議会制民主主義を目指していることは分かったが、二大政党制のような政党のあり方は、本来政策実現の手段という位置づけのはずだ。しかし外交政策、経済政策、社会政策いずれについても、小沢氏の本書におけるメッセージは非常に弱い。本書を読み終えて、政策を実現するというよりも「政局」の人だったという印象を受ける。
もっともこの点は、榊氏が政局を中心にインタビューを行ったせいかもしれない。

第二に、第一とも関係するが、小沢氏の政策面のブレの大きさである。上記に述べたように1990年代前半の小沢氏は新自由主義の政策を唱えていた。しかし現在の小沢氏は、最近まで山本太郎氏と行動を共にしていたことに示されているように、護憲、消費税増税反対、脱原発のような左派的政策に転じている。小沢氏は20年の間に政治理念を180度変化させたということになる。
もちろん、経済・社会の情勢や国際情勢の変化に応じて、政治家が政策を変えることはあり得る。当然の行動かもしれない。しかしそれぞれの政策の当否は別として、ここまで根本的に政策を変化させるのでは、少なくとも管理人はその人を信用できないという気持ちになる。小沢氏にとって先に立つのは政治的な立場であり、政策はその時の政治的立場にとって有利なものを選んでいるにすぎないのではないか、という疑いが生じてしまう。

第三に、政と官のあり方である。小沢氏は、本書の随所で中央官僚が無能であると述べ、嫌悪感を隠さない(本書では詳しく述べられていないが、小沢氏の官僚否定が裏目に出たのが民主党政権だった)。しかしアメリカ・中国を見れば分かるように、官僚は行政にとって必要不可欠の存在である。管理人が個人的に知っている範囲内でも、官僚は専門分野に精通しており、頭脳明晰だと感じる人が多い。
確かに官僚は国家的視野に立ったり、個々の国民の事情や気持ちに寄り添ったりする面が弱いのかもしれない。しかし官僚が行政の円滑な運営に必要不可欠である以上、政治家にとっては、いたずらに無能視するのではなく、国民の立場から官僚をうまく使いこなすことが求められるはずだ。小沢氏にはこのような考慮は見られない。

以上小沢氏に対して厳しい物の言い方になったが、上記のように1990年代管理人は小沢氏に期待していた。本記事を読まれた方には、期待が大きかったゆえ、とお取りいただければ幸いである。
小沢氏には絶対的な議席数・国民の支持を誇る自民党を2度にわたり下野させた実力がある。
本書を読めば、小沢氏が77歳の今でも自民党に対して強いファイティング・スピリットを抱いていることは分かる。
現在の安倍政権の法治国家原理を無視した暴政を終わらせるための主役として最も期待できるのは、ひょっとすると枝野幸男氏や玉木雄一郎氏ではなく小沢氏なのかもしれない。
小沢氏に対して最終的な評価を下すことは、現在はまだ早いのだろう。

追記 小沢氏は2006年に『小沢主義』(集英社インターナショナル)という著作を出版しており、本ブログで記事にしたことがありました。本記事の上部にある「小沢一郎」という個所をクリックすれば、その時の本ブログ記事を検索できます。
管理人は自分がどんな記事を書いたのか忘れていましたが、今日読み返してみると『小沢主義』では具体的な政策提言がなされていないという不満を感じたことが分かります。『小沢主義』が出版されたのは2006年で民主党による政権交代がなされる前ですが、その時既に小沢氏には具体的な政策が弱いという弱点があったのかもしれません。

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