ケンプのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』」(64年録音)

Beethoven: The 32 Piano Sonatas - Beethoven, Wilhelm Kempff
Beethoven: The 32 Piano Sonatas - Beethoven, Wilhelm Kempff
今日は朝から雨が降り続いています。管理人の居住する東京では、知事選の投票日です。投票日に雨というと投票率の低下が心配されますが、現在は期日前投票が普及しており、前回から大きな投票率の低下はないのではないでしょうか。管理人自身も、昨日、期日前投票を済ませました。

さて、今日の1曲は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第29番変ロ長調作品106「ハンマークラヴィーア」です。演奏はウィルヘルム・ケンプの1964年1月のDGへの録音です。ケンプはDGに2回にわたりベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を録音しており、今日聴いた録音は2回目の録音ということになります。

本曲は本ケンプ盤で40分強の演奏時間という、ベートーヴェンの全32曲のピアノ・ソナタの中で突出して長大な作品です。一昔前には、演奏技術面での至難さゆえに演奏不能と言われ、曲の内容面での難解ゆえに理解不能と言われた曲です。
第1楽章はスケールが非常に大きく、前衛性・未来志向性が感じられる楽章です。本曲の印象的な導入部分を聴いて、故・吉田秀和先生が何かの文章で「ベートーヴェンは時々曲の開始部分を工夫する(「英雄」「運命」交響曲がその例だったと思います)。」と述べておられたのを思い起こしたりしました。

第2楽章はわずか2分40秒のスケルツォですが、単につなぎとして言って切り捨てることのできない前衛的なものが感じられます。

第3楽章は、ある評論家によって「ベートーヴェンの全ての芸術の中で最も神聖なもの」と評されたというアダージョ楽章です。深遠かつ玄妙な楽章です。ロマンティシズムも感じられます。ベートーヴェンの深い感情の吐露であることは間違いないですが、それに止まらず楽章自体が一つのミクロコスモス、小宇宙を形成しているのを感じます。

第4楽章が驚異的な楽章ではないでしょうか。本楽章には、何百年まで先を見据えたような未来志向性が感じられます。現代音楽と言っても過言ではない楽章です。ベートーヴェンの全作品においてこのような未来志向性が感じられるという点では、本楽章と弦楽四重奏のための大フーガ作品133(本来は弦楽四重奏曲第13番第6楽章)が双璧だと思います。

ケンプの演奏は、彼以外のどんなピアニストを成し得ないであろう個性的な名演です。特に第3楽章での詩的表現、多彩な表現は、さすがケンプと感嘆せざるを得ないものがあります。第2楽章がやや乱暴な印象を受けるのと、特に第4楽章で技術に正確性を欠くのが欠点と言えば欠点ですが、これらは欠点として取り上げるのはおかしいのかもしれません。第4楽章などは全体的に表現力豊かに演奏されていると思います。
管理人は本曲の演奏の中で、本ケンプ盤をブレンデルと並び最も好んでいます。

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この記事へのコメント

aosta
2020年07月08日 14:39
rudolf2006さま

御無沙汰しております。1か月ほど前に久しぶりにブログを再開し、「みんなのクラシック音楽」で懐かしいrudolf2006さまのブログを発見した勢いでこちらにお邪魔いたしました。

私も若いころはベートーヴェンと言えば、ケンプでしたが、ハンマークラヴィーアは何故かバックハウスだったことを思い出します。ケンプの演奏を聴いてみなくては!
アルトゥール
2020年07月10日 01:15
aostaさん、お久しぶりです。
コメントを頂き、有り難うございます。
「ハンマークラヴィーア」ソナタ、バックハウスも名演だったと思います。
バックハウスは本曲のみはステレオで録音することができず、2度目の全集に初回のモノラル録音が流用されていましたよね。R・ゼルキンと共に重厚堅固なスタイルだったと思います。

なお私はrudolf2006様ではなく、アルトゥールです😅rudolf2006様のブログは「葉っぱに埃が落ちていたので水をかけて払ってやったブログ」という名前です。今も更新を続けておられます。