中川右介『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎)

中川右介『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎=幻冬舎新書)という本を読み終えた。著者は「クラシック・ジャーナル」誌の編集者で、本書は「クラシック・ジャーナル」誌に連載した記事をベースに執筆したものらしい。

物語はナチスが政権を掌握した1933年のベルリンに始まる。ナチスによる表現の自由の厳しい干渉を受けながら、ある時はナチスに抵抗しある時はナチスに従いつつ、世界最高の指揮者としてのプライドを保とうとしたフルトヴェングラー。そこに自らナチスの党員になってまで野心を実現しようとする若きカラヤンが現れた。緊迫した当時のドイツを背景に、2人の確執を中心に話は進んでいく。さらに終戦直後にはフルトヴェングラーを尊敬するチェリビダッケが現れた。本書はこの3人の動向を中心にカラヤンが「帝王」の座を手に入れるまでを描く。

本書は多くの資料を踏まえて書かれたもので、ぼくにとっては初めて知った事実が大半だった。たいへん興味深く短時間で読み終えることができた。芸術家というものは(むしろ芸術家だからこそ?)、実はすごく人間臭いものだと思った。ただ文章が生硬なのが惜しい。
読み終えてぼくがチェリビダッケの演奏が聞いてみたくなった。彼は終戦直後のベルリンで大変な人気を集めた指揮者だったのだ。ぼくはこれまで彼の録音は、EMIから発売された晩年のミュンヘン・フィルのものしか聞いたことがない。それはちょっとついていけないように感じたものだった。しかし今聞いてみるとまた違う印象を持つかもしれない。それにDGから出ているそれ以前のシュトゥットガルト放送響を振ったものは、まだ聞いたことがないので買ってみようと思う。

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