岡本裕一朗「モノ・サピエンス」(光文社)

岡本裕一朗「モノ・サピエンス」(光文社=光文社新書)という本を読み終えた。2006年12月20日刊の本である。人間は「ホモ・サピエンス」(知恵ある人)であるはずなのに、現代社会のいたる場面で人間の「モノ化」が進んできた、というのが本書のテーマである。

著者は現代社会を、モノの見方や考え方がもっぱら「消費者」という観点から行われている「消費者社会」(消費社会ではない)と位置づける。「消費者社会」においては、消費者は自己の欲望によってつき動かされ、供給サイドは消費者に多様な選択肢を提供することが重要になるという。そして消費者は手に入れたモノを次々に使い捨て、新たな消費に走るという。

著者は、ブランド商品、援助交際、労働、遺伝子、思考等、次々に具体的な「モノ化」の事例を挙げていく。特に遺伝子診断・遺伝子改変の問題については詳しく紹介してある。著者の挙げるいろいろな場面でのモノ化については、ぼくもうすうす感じていたけれど(例えばクラシック音楽界での演奏のモノ化などは典型例だ)、この遺伝子操作技術の発達については初めて知るもので、「知らない間にここまで来ていたのか…」という感想を持った。そして著者は「モノ・サピエンス」が政治の場面での混乱をもたらす可能性を示唆する一方、「モノ・サピエンス」化はもはや不可避・歴史的必然であるとして肯定するしかない、として本著を終える。

この本を読み終えて、世の中は来るところまで来た、という感想を持った。「モノ・サピエンス」化は必ずしも一概に否定すべきではないのだろう。ただ正直言って(ぼくに限らず誰もが)薄気味悪さのようなものを感じるだろう。大きな疑問として、「モノ・サピエンス」化と人間の幸福とはどのような関係にあるのだろうか?
それはともかく、本書は問題提起の書として大きな読み応えがあった。

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