ケンプのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第24~26番」

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久しぶりにベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いてみました。ウィルヘルム・ケンプの演奏する第24番作品78、第25番作品79、第26番作品81「告別」の3曲です。録音は第24番が1965年1月、第25番・第26番が1964年9月です。

これら3曲は、ベートーヴェンがピアノ・ソナタ分野での中期の最高傑作第23番「熱情」を書き上げて4年の後に書かれたもので、後期への架け橋ともいうべき作品です。いずれも穏やかな情感の漂った曲で、ぼくは昔から大好きでいます。

第24番と25番ですが、24番が2楽章編成で、25番が急―緩―急の3楽章編成という違いはありますが、ともに約8分の小品です。ともに心優しい、聴いていて心が和やかになる愛すべき曲です。24番は「テレーゼ」と呼ばれることもある優雅なソナタです。また25番の緩徐楽章は、情感豊かなものですが、初期ソナタの緩徐楽章と異なりベートーヴェンが後期ソナタの玄妙な世界に入りつつあることをうかがわせるものです。

第26番「告別」は、ベートーヴェンの全32曲のピアノ・ソナタの中で、「悲愴」「月光」「熱情」の3大ソナタに次ぎ、「テンペスト」「ワルトシュタイン」とともに6大ソナタと呼ばれている名作です。この曲はナポレオン戦争の最中に書かれたもので、ベートーヴェンが自分の後援者であるルドルフ大公がナポレオンの来攻を避けるためウィーンを離れる際に贈ったものとして有名です。急―緩―急の3楽章編成で、それぞれ「告別」「不在」「再会」という表題が付されています。
しかし聴いていて感じるのは、第1楽章では「告別」の悲しさはあまり感じられず、第2楽章は「不在」の寂しさがそれほど切羽詰まったものではない、ということです。第3楽章は「再会」の歓喜にあふれていますが。むしろ全曲を通じて温和な雰囲気が支配的です。この時期のベートーヴェンの心境の現れなのでしょう。

ケンプの演奏は非常に主観的なものです。特に第24・25番の2曲は恣意的といってもよいほどです。何ものにもとらわれず、詩情豊かに、自ら感興に乗って自在に演奏していくといった風情が感じられます。このようなケンプ節は、ぼくのようなケンプのファンにとっては堪えられない魅力です。ただこのようにあまりに主観的なスタイルには抵抗を感じる方もおられるかと思います。

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