野口悠紀雄『資本開国論』(ダイヤモンド社)

野口悠紀雄『資本開国論』(ダイヤモンド社、2007年5月31日刊)という本を読み終えた。著者の野口悠紀雄氏は現在、早稲田大学大学院教授で、これまで多数の著書を刊行している他、「週刊ダイヤモンド」誌にコラムを連載している有名な経済学者である。ただしぼくは、これまで野口教授の本は『超整理法』『日本経済再生の戦略』(ともに中公新書)の2冊しか読んだことがなかった。

さて本書『資本開国論』だが、野口教授は、現在の日本に求められているのは産業構造の改革であるという。安倍政権の取っている成長路線は、従来的な重厚長大型の製造業を助けるもので、産業構造の改革には役立たないとして批判する。そしてイギリスやアイルランドの例を見習えと言う。イギリスやアイルランドでは、製造業は弱いままだが、産業構造がソフトウェア産業や金融業などサービス業中心に変革することに成功し、その結果国民1人当たりのGDPは日本を追い越すに至った。日本も脱工業化に向けた産業構造の改革が必要であるという。

野口教授の立論は非常に分かりやすく歯切れが良い。もちろん経済学上の理論に裏付けられている。時には、法人税は製品の生産コストを形成する要因ではない、法人税を減税しても企業投資が活発になるわけでない、といった常識(?)に反する主張もなされている。ぼくにとっては非常に面白く読み終えることができた。

ただ野口教授のように、これまで日本が得意としてきた「ものづくり」すなわち製造業を、すべて工業化社会のものでコモディティー産業だとして切って捨てるのはどうなのだろうか。教授は、トヨタ自動車、キャノンのような日本の代表的な製造業はグループBの1だとして、グループAのグーグル、マイクロソフトといった企業と数字を挙げて比較して見せる。そう言われると反論は難しいが、数字には還元されない日本とアメリカ・イギリスとの文化的相違があるのではだろうか。ぼくとしては若干の抵抗を感じる。
ただし野口教授の唱える外資が日本市場の入ってくるのは歓迎だというのはその通りだと思う。日本企業が外資系の傘下に入った結果企業価値が向上するのであれば、株主にとっても消費者にとっても利益になる。外資脅威論は、野口教授の言うように経営者の保身の見地から唱えられている感情的なものだと思う。

読みやすく、そして読み応えのある一冊だった。


追記 昨日「週刊 東洋経済」誌を立ち読みしていたら、同誌の選ぶ今年上半期のビジネス書の第2位に本書が選ばれていた。たいへん好評のようだ。(8月15日記)

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