桐野夏生『残虐記』(新潮文庫)

桐野夏生『残虐記』(新潮文庫)という小説を読み終えた。
この小説は主人公の景子がまだ10歳・小4の時、工員のケンジに拉致・監禁されたところから始まる。景子はケンジの住む部屋に監禁され、監禁生活は1年余りに及ぶ。ケンジの隣室にはヤタベというケンジと同じ鉄工所に勤める男が住んでおり、景子はヤタベに助けを求めようとするが…という物語である。

この小説は2000年に報道された新潟県に少女監禁事件に触発されて執筆されたらしいが、監禁された期間も犯人の年齢・境遇もまるで違うので、実際の少女監禁事件とは全く別個の小説と考えた方が良いと思う。
この小説で描かれている、主人公の少女と監禁したケンジと隣人ヤタベの三つ巴(あるいは宮坂検事を含む四つ巴)の性的関係、どこまでが事実でどこまでが想像だかわからない性的関係は、非常にアブノーマルでディープでグロテスクでアグリーだ。異常なまでに異常だ。
解説(筆=精神科医 斎藤環)では、谷崎潤一郎『鍵』との類似に言及されているが、ぼくに言わせると谷崎『鍵』の方がよほど健全で理解可能だ。

ぼくは桐野さんの小説は、昨年9月に初めて『グロテスク』を読み、以下『OUT』『リアルワールド』『魂燃え!』『玉蘭』、そして今回の『残虐記』と読んできたが、どれも非常に面白い。ぐいぐい読ませる筆力がある上に、人間というものの持つ醜い側面をえぐり出す能力には凄いものがある。ぼくにとっては、現役ではもっとも注目している作家だ。

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