ハンガリーSQのベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番」

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今日はハンガリーSQの演奏するベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番作品132を聴いてみました。録音は1965年12月から1966年にかけてです。

ベートーヴェンの5曲の後期弦楽四重奏曲の作曲順は、作品番号と異なっています。すなわち最初の第12番作品127が作曲された後、次に第15番作品132が作曲され、次いで第13番作品130、さらに第14番作品作品131、そして最後に第16番作品135となっています。そして最初の第12番が伝統的な4楽章編成を取ったのに対し、第15番は5楽章、第13番は6楽章、第14番は7楽章編成と1楽章ずつ増えているのです。こうしてみると今日聴いた第15番作品132は、ベートーヴェンが内容面だけでなく、形式面でも伝統から離れていった最初の曲だということになります。

さて第15番ですが、この曲の中心が「病気が癒えた者の神に捧げる感謝の歌」と題された第3楽章であることは間違いありません。この楽章は長大で、このハンガリーSQ盤でちょうど16分を要します。表題の通り病気が治った者の神に対する静かで敬虔な祈りを聴くことができます。静謐で崇高な楽章です。そしてそれを明るく活発な第2楽章と第4楽章が取り囲み、さらにユニークな第1楽章と第5楽章が取り囲んでいます。第1楽章は深刻さと穏やかさが同居したベートーヴェンの後期らしい自在なのに対し、第5楽章の主題は当初第9交響曲の終楽章に予定されていたということからも分かるように、情熱的で堂々としたものです。
このように何ものにもとらわれず、自由自在に作曲されたこの第15番は、ベートーヴェン後期の最高傑作の1つだといえる名曲でしょう。

ハンガリーSQの録音はこの団体のキャリアの最後期に録音されたものです。第1ヴァイオリンのゾルダン・セーケイは作曲家ベラ・バルトークと親交が深かったという名手ですが、このように書くと何だか渋い演奏ではないかというイメージがあるかもしれません。ところがセーケイの演奏は意外に流麗で若々しいのです。第3楽章を中心に随所で見られるセーケイの歌いまわしは、独特の魅力を感じさせます。このハンガリーSQの演奏は、グローバリズムの嵐が押し寄せる前の東ヨーロッパの人格と教養の高い紳士たちのアンサンブルを聴いているような気品と風情があって、ぼくは非常に魅力を感じるのです。

話はそれますが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、モノーラル時代でバリリSQ、ステレオ時代に入ってからズスケ(ベルリン)SQとこのハンガリーSQ、最近の録音でタカーチSQというのがぼくの好みでいます。

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