杉山茂樹『4-2-3-1』(光文社)

杉山茂樹『4-2-3-1』(光文社新書)という本を読み終えました。本書はサッカーの戦術に関する本で、ブログ仲間のIさんから教えて頂いて読んでみたのです。

サッカーの観戦といっても、観戦する人によっていろいろな視点があると思います。特定のチーム(日本代表、鹿島アントラーズ、ACミラン等)を応援するという視点、特定の選手(ロナウジーニョ、中村俊輔等)に注目する視点、等です。本書は戦術、布陣という視点に的をしぼってサッカーを観戦する術を教える本と言えるのでないでしょうか。

なぜ戦術や布陣が重要なのか。本書の最初の方、32頁にこんなことが書かれています。

「個人技に対し、戦術を拠り所に立ち向かおうとする姿勢は、いわば弱者の論理だ。個人技ではブラジルに勝つ見込みはないという割り切りを、彼ら(=欧州勢)は根底に潜ませている。賢い発想だと言わざるを得ない。」
「少なくとも、日本はブラジル式ではないだろう。ブラジル人のいうな圧倒的な個人技を備えた選手が次々に育つ環境にはない。強者の発想で臨むわけにはいかないのだ。」

日本のように個々の選手の技術が劣る国には、相手を上回る戦術が必要不可欠なのです。

そして、1987年にACミランの監督に就任したアリゴ・サッキ監督(後のイタリア代表監督)が創始し、その後継ファビオ・カペッロ監督が継承した、高い位置でプレスをかけ相手ボールを奪うサッカーの有効性、さらにサイド攻撃のの有効性、特にサイドで数的に優位に立つことの重要性が、具体例を豊富に挙げつつ、繰り返し説かれています。具体例の中には、ぼくが見たことのある試合も多く、なるほどと納得させられました。

著者の杉山氏の観点からすれば、トルシエジャパンは守備重視で時代遅れ、ジーコジャパンは時代に逆行するもので最初から勝ち目がなかったのです。そして本書の最後で、現在の岡田ジャパンに対する不安が述べられています。

全体にたいへん面白く、納得させられることの多い本でした。杉山氏の唱える攻撃的サッカー(タイトルの「4-2-3-1」はそのための布陣です)、ラインを上げ、高い位置で相手ボールを獲得しサイドから攻撃するサッカーが、「弱者の論理」として絶対的なものなのかどうか、ぼくには分かりませんが、たいへん説得力のあるものです。また、欧州のメディアでは「4-4-2」のような3分割ではなく、「4-2-3-1」のような4分割表記が常識だとか、リードしているチームは守るのではなく攻めることによって逃げ切りを図ることが多いなど、ぼくの知らなかったことも多く書かれていました。

ぼくはこれまで、「日本代表は深い位置から攻め上がる能力はなさそうだから、3-5-2の布陣で、3人は守り専門にして、中盤からゲームを組み立てるのがよいのではないか」とか、「日本は優秀なサイドアタッカーがいないから、中央でパスをつなぐようなサッカーをやるのがよいのではないか」などと考えていました。しかし本書を読んで、こうした考えが全く的外れ(特に後者は吹飯物です)であることが分かりました。自分の考えがここまでコテンパンにやっつけられると、かえって気持ちのよいものです。

明日は味の素スタジアムでJリーグの試合(FC東京対名古屋グランパス)を見に行く予定です。本書を読んだおかかげでサッカーを見ることがより楽しみになりました。

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