デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』(作品社)

デヴィッド・ハーヴェイ(渡辺治監訳)『新自由主義』(作品社)という本を読み終えた。2007年3月10日刊の本である。
著者のハーヴェイ氏は、1935年、イギリス生まれ、ジョンズ・ホプキンス大学教授、オックスフォード大学教授を経て、現在ニューヨーク市立大学教授で、専攻は経済地理学とのことである。本書は学術書として位置づけられるべきもので、ぼくはふだん学術書はあまり読まない(理由は、単に難しいからです)。しかし本書は出版された時に新聞の書評を読んでから気になっていた。
読んでみるとたいへん興味深い内容で、翻訳が比較的読みやすかったこともあって、意外に短期間で読み終えることができた。奥付を見ると、2008年1月10日6刷となっているから、発売後10ヶ月で6刷まで行ったことになる。この種の本としては、売れ行きがいいのではないだろうか。

本書は、1970年以降、サッチャー元英首相、レーガン元米大統領を中心に、世界中で推進された新自由主義(Neoliberalism)を詳細に分析・批判するものである。すなわち、第2次大戦後の経済成長期には、ケインズ主義流の財政政策が取られたため、資本家階級と労働者階級の階級闘争のおいて労働者階級の分け前が大きくなった。著者は、新自由主義を、資本家階級による分け前の奪還のための行動と捉えるのである。
しかし新自由主義政策が導入された経緯は、各国ごとに異なっている。著者は、イギリス、アメリカだけでなく、メキシコ、アルゼンチン、韓国、スウェーデン、そして中国(!)などの各国ごとにいかに新自由主義が導入され、各国国民の支持を獲得していったのか、その歴史的経緯を深く考察する。その過程では金融資本が大きな役割を果したこと、そしてその結果、労働者階級が不利益を受け、社会的不平等が大きく進行したことが浮き彫りにされる。

そして現状では、環境破壊や財政不均衡など、新自由主義の矛盾があらわになり、対抗運動が活発になってきたことが紹介される。
著者の立場は、ぼくが最近読んだ本だと、本的に市場原理主義に立つアラン・グリーンスパン前FRB議長の「波乱の時代 上・下」(日本経済新聞出版社)などとは正反対の立場だが、ぼくとしては、共鳴できる点が多かった。

最後に、本書の監訳者である渡辺治一橋大教授による「日本の新自由主義」という論考が付されている。90年代の日本の選挙制度改革を新自由主義運動であると捉えたり、民主党を保守主義政党と定義するなど、ぼくとしてはやや疑問に感じる部分もあるが、1個の論考として非常に興味深いものだった。

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