岩田規久男『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)

岩田規久男『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)という本を読み終えた。
著者の岩田氏は1942年生まれ、学習院大学経済学部教授である。本書は本年8月20日の刊である。

ぼくはこのブログで次のようなことを書いたことがある。
日本には経済学者・エコノミストを名乗る人々が山ほどいるが、彼の主張は全くのバラバラで、共通点など何一つない。このような状況の下で、難問山積の経済問題を把握するためには、1人の信頼できる経済学者を見つけ、その人の立場から諸問題を考察するのがよいのではないか。そのような経済学者として自分は岩田規久男教授を信頼している。

その岩田教授が今年に入ってから一般向けの本を精力的に執筆している。春に出た『金融危機の経済学』(東洋経済新報社)、『世界同時不況』(ちくま新書)に続き、今夏に『国際経済入門 新版』(岩波新書)、『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)と合わせて4冊である。

ぼくは春に出た『金融危機の経済学』『世界同時不況』は共に読み終えた(前者は本ブログで記事にした)。今回の『日本銀行は信用できるか』で3冊目である。

さて本書『日本銀行は信用できるか』は題名の通り、日本銀行(日銀)をテーマにした書である。
日銀というと裁判所と同様、これまで非常に専門的な機関というイメージが強く、裁判所同様あるいは裁判所以上に聖域のように思われ、その行動はあまり批判の対象とならなかったのではないだろうか。
本書はその日銀の政策に対し、正面からメスを入れる書である。

著者は最初に、これまでの日銀総裁の略歴を紹介する。
これまでの日銀総裁は、と財務省(旧大蔵省)事務次官経験者と日銀副総裁が交互にたすき掛けのように務めてきた。しかも財務事務次官も日銀副総裁もすべて東京大学法学部出身なのだ(現在の白川総裁は東大経済学部出身で例外)。
また日銀の金融政策を決定する政策委員会の審議委員も女性枠・産業枠・金融・証券業枠・学者枠など固定的な選別枠があり、特に経済・金融の学識豊かな専門家のみで構成されるアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)とは大違いだという。
そしてこのように(東大)法学部出身者を中心に金融政策が決定されるせいで、官僚的な「前例主義」に陥り、たびたび金融政策を誤ってきたという。

そして続いて、著者がこれまで多くの書で一貫して述べてきた不況の原因としての資産デフレ論と、不況克服のためのインフレ・ターゲティング論に基づいて、これまでのバブル崩壊後の日銀が、過度にインフレを警戒するあまり、少しでも景気回復の兆しが見られるとすぐに金融引き締めに転じ、景気の腰を折ってきた歴史を解説する。
この日銀のこれまでの金融政策批判は、手厳しいが、説得力が高い。

最後に日銀改革の必要性を訴えて終わることになる。

本書は、これまで聖域のように思われてきた日銀の問題点を明らかにするなかなかの力作だと思う。

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