ジュリアード四重奏団のベートーヴェン「弦楽四重奏曲第11番『セリオーソ』」

今日の東京は天気の良い日でした。残暑は日ごとにに穏やかになり、秋に入ったという実感の湧く1日でした。
今日聴いたのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」ヘ短調作品95です。
演奏はジュリアード四重奏団で、録音年月は1970年3月18、19日です。同四重奏団は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を2回録音していますが、今日聴いたのは初回の録音です。

本録音当時のジュリアード四重奏団のメンバーは、ロバート・マン(第1vn)、アール・カーリス(第2vn)、サミュエル・ローズ(va)、クラウス・アダム(vc)の4人でした。同四重奏団は前年に、ヴィオラがラファエル・ヒリヤーからローズに交代しており、交代した直後の録音だということになります。

さて弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」ですが、これはベートーヴェンの16曲の弦楽四重奏曲の中の異色作です。16曲の中で作品の規模はもっとも小さいのですが、凝集度は最も高いのではないでしょうか。

第1楽章はダイナミックな力感あふれる楽章です。ベートーヴェンの内心の激情の吐露なのかもしれません。
第2楽章は緩徐楽章ですが、たいへん内省的で、切れ目なく第3楽章に続きます。
第3楽章はスケルツォですが、ベートーヴェンがセリオーソ(厳粛に)という指定をした楽章です。舞曲風の旋律から美しいトリオに変じます。
第4楽章は流麗なロンドから、最後は激しく高揚します。

この曲をどのように考えるかですが、両端楽章はベートーヴェンの激情の現れであり、それに内包されて第2、3楽章で、作曲当時の深刻で内省的な心情が綴られていると考えるべきではないでしょうか。そして、深刻な内面から発せられた激情が、両端楽章に向かって放射されているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

本曲はたいへん凝集度が高く、このようは弦楽四重奏曲はベートーヴェンより以前には現れず、ベートーヴェンの後も、シューベルトらロマン派を通り越して、ラヴェルや新ウィーン楽派、それにバルトークの弦楽四重奏曲まで存在しないように思います。その意味で、たいへん前衛的で、音楽の未来を予見したかのような作品とは言えるのではないでしょうか。

ジュリアード四重奏団の演奏は、終始早いテンポで、熱気あふれるダイナミックなものです。「セリオーソ」のニックネームにふさわしく厳格な演奏です。厳しいという点ではこの上ないですが、個人的にはもう少しゆとりのある演奏の方がよいように思います。中間の第2、3楽章ではもう少し落ち着いた表情を見せてもよいのではないでしょうか。

しかしこの点は、録音された70年当時のジュリアードSQの持ち味なのでしょう。全曲通じて、熱気と厳しさ、そしてそれと裏腹なすっきり感で貫かれた立派な演奏だと思います。

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