リンゼイ四重奏団のベートーヴェン「弦楽四重奏曲第14番」

今日の東京は、午後から雨となり、気温も1日中真冬のような寒さでした。冬が目の前までやってきたことを実感させられる1日でした。

今日はリンゼイ弦楽四重奏団の演奏するベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番を鑑賞しました。録音はCDに表記がありませんが、1980年代前半のデジタル録音と思われます。リンゼイSQはベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を2回録音していますが、今日聞いたのは最初の録音です。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中の最高傑作、または古今の弦楽四重奏曲の中の最高傑作という評価もあるくらいの名作です。
全7楽章という長大な構成ですが、楽章間の中断はなく、全7楽章が続けて演奏されます。ベートーヴェンの後期ならではの何ものにも捕われない自由な創作態度が現れています。

しかし7楽章構成といっても、中心をなすのは、演奏時間の長さからいっても内容からいっても、第1楽章と第7楽章の両端楽章とちょうど真ん中の第4楽章であることは、明らかではないでしょうか。
そして演奏時間の短い第3楽章は第4楽章の序奏のようなもので、また第6楽章は第7楽章の序奏のような立場だと見ることができるのではないでしょうか。もっとも第6楽章は序奏だと言い切ってしまうには惜しい叙情性が感じられますが…。

このようにこの弦楽四重奏曲第14番は、いろいろな見方をすることができます。ぼくのような素人でさえ、そのように思うのですから、専門家の間ではいろいろな見解が出されていることと思います。

しかし全体としての雰囲気は、行進曲風の第7楽章は別として、意外に軽妙なのではないでしょうか。軽妙といってももちろん軽薄なのではなく、人生のさまざま経験を積んだ者のみがに到達することのできる、飄々とした、軽やかさのようなが現れているように思います。悟達の境地に達した者のみが表すことのできる玄妙さに満ち溢れています。
中でも、全曲の中心の置かれ、この曲の核心をなすと思われる変奏曲形式の第4楽章は、軽やかで、玄妙な雰囲気に満ちています。

リンゼイ四重奏団の演奏は、緊張感の張り詰めた主観性の強いものです。
演奏時間は非常に長いですが、いささかも弛緩することがなく、テンポの遅さを一切感じさせません、第1ヴァイオリンのピーター・クロッパーを中心に、表現意欲の非常に高い演奏です。今月ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番の記事を書いたラサール四重奏団とはちょうど正反対のスタイルです。
各奏者の音色も美しく、今日聴いてみてたいへん感動することができました。

リンゼイ四重奏団は、ぼくは2回実演に接したことがあります。日本では人気が出ないままに終わった感がありますが、ぼくにとっては忘れることのできない個性的な団体でした。


追記 本曲については、ハンガリー四重奏団の再録音についての記事を書いたことがあるので、自己TBしました。

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