ジャック・アタリ『21世紀の歴史』(作品社)

ジャック・アタリ(林昌宏訳)『21世紀の歴史』(作品社)という本を読み終えた。同書は2008年8月30日の刊である。出版当初から読みたいと思ったいた本だったが、今まで延び延びになってしまった。

著者のアタリ氏は、1943年、アルジェリア生まれのフランス人である。1980年代にフランスのミッテラン大統領の下で大統領補佐官として活躍し、1991年ヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁に就任、現在はサルコジ政権下でアタリ政策委員会の委員長を務めているという。

本書は、タイトル通り、今後の世界がどのような方向に進んでいくかを予言する書だが、その前提としてこれまでの歴史が回顧される。
その際、興味深いのが「中心都市」の変遷である。「中心都市」とは、市場経済の拠点となり、クリエーター階級(海運業者、企業家、商人、技術者、金融業者)が集まった都市である。1200年頃のブルージュに始まり、ヴェネチア、アントワープ、ジェノヴァ、アムステルダム、ロンドン、ボストン、ニューヨーク、そして現在のロスアンジェルスと中心都市は変遷してきた。では、次の中心都市は世界のどこであろうか?アタリは中国、インド、日本など世界各国の可能性について論及する。

そして「21世紀の歴史」はどのように進展していくのであろうか?
アタリは、2050年頃、市場の要求や新たなテクノロジーの利用により、国家を超えた<超帝国>が出現するとする。超帝国は、公共サービスや民主主義や、国家さえも破壊してしまうという。

しかしそれで終わるわけではない。国家が弱体化すると、次は万人の万人に対する争い、<超紛争>が始まるという。そこでは地域紛争が続発し、海賊や宗教原理主義者が跋扈し、人々のアイデンティティは危機にさらされる。

しかし世界が超紛争のまま終わってしまうわけでもない。超紛争に代わって、調和を重視し、法の下の平等や隣人の対する義務が重んじられる<超民主主義>の世界が実現するという。その担い手をアタリは<トランスヒューマン>と呼ぶ。トランスヒューマンの人々とは、世界の運命に関心を持ち、人道支援や他者に対する理解に熱心であり、次世代のために良い世の中を残そうとする。男性より女性の方がトランスヒューマンに向いているという。

このように壮大なスケールで描かれた書だが、まるで物語を読んでいるように、たいへん面白かった。
日本人(少なくともぼくは)は外国の書籍というと、どうしてもアメリカ人の執筆した本を読むことが多いと思う。本書はヨーロッパの知性が世界の行方をどのように見ているかという点でフレッシュだったし、興味深い書だった。

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