ナオミ・クライン『これがすべてを変える』上・下(岩波書店)

ナオミ・クライン(幾島幸子・荒井雅子訳)『これがすべてを変える』上・下(岩波書店)という本を読み終えた。
本書は、『ショック・ドクトリン』(岩波書店)の著者ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』に次ぐ著作である。原著は2014年の刊だが、日本語訳の出版は本年8月31日だった。管理人は『ショック・ドクトリン』を読んで大きな感銘を受け、クライン氏の次作を待ち望んでいたので、日本語訳が出るとすぐに買い求めた。上・下で600頁を超える大作だったが、途中で仕事が多忙となり中断を余儀なくされた1ヶ月余りを除くと、ほぼノン・ストップで読み終えることができた。

本書は気候変動問題をテーマにした著作である。
今夏アメリカ・テキサスが巨大なハリケーンに見舞われたが、このような異常気象は90年頃から毎年世界のどこかで発生している。著者は、2013年の世界での二酸化炭素排出量が1990年と比べて実に61%も増加しているのだという。2000年代に入ってからは、年3.4%の割合で増加しているのだ。
なぜ人類はこれまで、排出量削減のための必要な取り組みをしてこなかったのか?
それは、排出量削減が、前作『ショック・ドクトリン』で描かれた規制緩和型資本主義と相容れないからだ。著者は、そのことが、これまで気象変動の交渉プロセスが失敗に終わり、企業グローバリゼーションが拡大してきた原因だという。

本書では気候変動を否定する右派又はエセ科学者の会議や、気候変動を人工的に管理しようとする極めて危険な地球工学者について語られる。またグローバル企業だけでなく、一部の大規模環境保護団体は実はエネルギー産業と裏で手を結んで気候変動に悪影響を及ぼしているという。
そして、カナダ・アメリカを中心に、著者が抵抗地帯と呼ぶ草の根の抵抗運動が、様々な事例を挙げて述べられている。
著者のメッセージは、地球を破滅をもたらそうとしている気候変動は新自由主義がもたらしたものであり、新自由主義を克服し真の民主主義を達成しない限り気候変動問題を解決することはできない、ということである。逆に言うと、気候変動問題は、真の民主主義を達成するチャンスだということだ。

著者のクライン氏の世界各地のわたる豊富な取材には、『ショック・ドクトリン』 の時と同様驚かされる。例えば下巻ではエネルギー企業から投資を撤退しようとするダイベストメント運動について述べられた個所があるが、ダイベストメントは日本のメディアではほとんど報道されない話なのではないだろうか。

気候変動問題は、地球の生態系に破滅をもたらそうとするものである以上、本書は『ショック・ドクトリン』以上に深刻なテーマを扱ったものだということができよう。

なお本書は2014年の刊行のため、今世界に普及しようとしている電気自動車(EV)については述べられていない。EVの普及は気候変動問題にとって明るい材料と言えるが、トランプ大統領によるアメリカのパリ協定離脱は暗い材料と言える。

このEV普及やパリ協定で分かるように、気候変動問題は、非常に深刻な問題でありながら、ほんの数年で世界の動向が変わる、目が離せない問題である。本書はこの21世紀で人類に課せられた最大の難問というべき気候変動問題について、解決の方向性を明確に指し示した貴重な書だと言えよう。



これがすべてを変える??資本主義VS.気候変動(上)
岩波書店
ナオミ・クライン

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