ギーゼキングのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第12番『葬送』」

今日5月6日はゴールデン・ウィーク最後の1日です。管理人はゴールデンウィーク後半は、昨日5日に妻とともに横浜に観光に行った以外は、自宅で何もせず過ごしました。

今日の1曲は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番変イ長調作品26「葬送行進曲」です。演奏はワルター・ギーゼキング(p)の1956年10月23~25日の録音です。

本曲はベートーヴェンの中期ピアノ・ソナタの最初の曲です。この点、初期ソナタの最後の曲とする専門家もいるようです。しかし管理人は、初期ソナタではすべて急・緩・急の3楽章又は急・緩・急・急の4楽章構成という古典的な構成が採られていたのにたいし、本曲では(そして続く13、14番でも)緩徐楽章で始まるという異色の構成が採られていることから、中期の最初の曲だと考えたいです。本曲はベートーヴェンにとって一つの実験に踏み出した作品なのです。

さて第1楽章は緩徐楽章ですが、ここがじっくりした風情がして何とも良いものです。管理人は昔からこの第1楽章が好きでいます。第2楽章はスケルツォです。第3楽章は葬送行進曲になっており、ここにもベートーヴェンの実験的精神が窺われます。同楽章はやはり悲愴感が伝わってきます。第4楽章は一転して短く軽妙に終わります。

このように本曲は緩・急・緩・急の4楽章構成ですが、演奏時間は第1、3楽章の緩徐楽章が圧倒的に長く、ベートーヴェンの言いたいことはこの2つの楽章にあったのだろうと思われます。緩徐楽章の時間が長いせいで、全体的に静かなじっくりした曲だという印象を与えます。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ分野での傑作の一つだと言えるのではないでしょうか。

ギーゼキングの演奏は見事なものです。彼は、全体的にはゆっくり目のテンポでテンポを揺らさず、ペダルを極力排し、曲のフォルムを維持しながら、音の強弱、タッチの多彩なニュアンスで曲を聴かせてくれます。一見すると淡々とした演奏のように見えますが、デリケートな演奏なのです。モノラル録音ながら音の澄んだ美しさが伝わってきます。
ギーゼキングというとモーツァルトやドビュッシー、ラヴェルが有名ですが、ベートーヴェン弾きとしても超一流だったことが分かります。彼がEMIにベートーヴェンのソナタ全集に録音する途上で(具体的には16、22、24~29、32番の9曲が欠けているようです)急逝したことがたいへん惜しまれます。

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