スウィトナー/SKBのブルックナー「交響曲第1番」

今日成人の日の東京は晴天で、気温は上がりました。駅などで振袖姿の新成人の女性が目につきました。
今日の1曲はブルックナーの交響曲第1番です。演奏はオトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(以下「SKB」と省略します)です。1987年5月12〜15日のドイツ・シャルプラッテン・レーベルへの録音です。今だとベルリン・クラシックス・レーベルから発売されているのではないでしょうか。
ブログ仲間の方が最近、スウィトナーのブルックナーを取り上げておられたので(ただしその方は第1番ではなく8番でした)、聴いてみることにしたのです。

ところで本記事を書くに際して気づいたことがあります。本ブログでは13年半前の開設以来、できるだけ多くの曲を取り上げたいという気持ちから、同曲異演をできるだけ避けています。そうすると取り上げる曲の数はどうしても多くなります。ところがブルックナーの第1番は今回が初めてのようなのです。ブルックナーの交響曲第2〜9番は全て、その大半は複数回、記事を書いていますが、第1番は今回が初めてです。

さて本曲は、急・緩・急・急の典型的な4楽章構成を取ります。なお本スウィトナー盤はリンツ稿というものを採用しています。
第1楽章は素朴で自然な、いかにもブルックナーらしい楽章です。ブルックナーは最初からブルックナーだったのだと思わせられます。
第2楽章はアダージョですが、後年のブルックナー作品のアダージョのような崇高美は乏しいように思います。
第3楽章はスケルツォです。やや長すぎる感がありますが、その一方で充実感もあります。
第4楽章はカッコいいです。

本曲は、後年のブルックナー交響曲、特に第7〜9番のような大宇宙的な性格、神々しい神秘性は乏しいように思います。しかし管理人はここ数年、初期の素朴なブルックナー、具体的には第1〜3番に、第7〜9番と同じくらい共感を覚えています。第1〜3番には第7〜9番とは別の魅力があるように思うのです。

スウィトナー指揮SKBの演奏ですが、スウィトナー(1922ー2010)は1990年頃引退状態となったので、彼のキャリアの中では最後期の録音ということになります。
彼が指揮者としてはまだ若い70歳前で引退状態となった理由について、管理人は「レコード芸術」誌か何かで東西ドイツの統一が彼の精神面に大きな影響を与えたと書かれていたのを読んだのを覚えています。その時は、芸術家という人種は人一倍繊細な性格のはずなので、社会主義による理想国家建設の夢が途絶えたことがスウィトナーの精神面に大きな打撃を与えたのだろうと思い、納得していました。その一方で、ブルックナー、マーラーの音楽に親しむようになるにつれて、彼がベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームス、ドヴォルザークの交響曲全曲録音を果たしたにもかかわらず、ブルックナー(第1、4、5、7、8番のみ録音)、マーラー(第2、5番のみ録音)の全曲録音の途中で引退に至ったことを残念に思っていました。
ところが2010年に彼が亡くなった時ネットで、東西ドイツの統一ではなく難病パーキンソン病を患ったことが引退の原因だと知り、さらに納得できました。

本曲ではスウィトナー/SKBらしい柔らかなサウンドで、自然体の流麗なブルックナーを聴かせてくれます。テンポは普通だと思います。間延びすることは一切ない、名演だと感じます。
またブルックナーの交響曲、特に初期の交響曲は、ドイツ伝統のローカル色を残っているオーケストラが最も適しているように思います。アメリカのスーパー・オーケストラや、同じドイツでもベルリン・フィルのようなインターナショナルなオーケストラは、ブルックナーとの相性がどうなのか、と思います。本曲でスウィトナー率いるSKBは、東ドイツ時代の録音のため、木目の肌触りの感じられる、黒光りのする音色を維持しており、ブルックナーとの相性は非常に良いように思います。特に弦楽器に、そのように感じます。
管理人は、2016年に現在の音楽監督ダニエル・バレンボイムに率いられたSKBが日本でブルックナー・チクルスを行った時、聴きに行ったことがあります(曲は第7番でした)。その時はさすがにヨーロッパの一流オーケストラは違うと思わされるような名演でしたが、今日第1番の録音を聴いてみて、SKB独自のオーケストラの個性という点ではやはり東西統一前のスウィトナー時代だったように思いました。

こうなるとスウィトナー/SKBによるブルックナー全集が完成に至らなかったのがいかにも残念ですが、第1、4、5、7、8番という5曲の録音が残っているだけでも幸運だったと感謝すべきなのだろうと思います。

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