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zoom RSS クレーメル/カシュカシアン/マのモーツァルト「ディベルトメントK563」

<<   作成日時 : 2007/05/08 19:07   >>

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ギドン・クレーメル(vn)、キム・カシュカシアン(va)、ヨーヨー・マ(vc)の演奏するモーツァルト「弦楽三重奏のためのディヴェルティメントK563」を聴いてみた。1984年3月のCBSソニー(現ソニー・クラシカル)への録音である。
音楽評論界の大御所・吉田秀和先生はこの曲を高く評価しておられるようだ。吉田先生の名著「LP300選」(新潮文庫、ただし現在は品切れ)から、長くなるが引用してみよう。

 「モーツァルトの後期―晩年の彼が到達した世界は、本当に唯一無二のものであり、それはベートーヴェンの晩年のような形而上学的深みや、バッハのそれのような超越的な高さではなくて、もっと現世的でありながら、同時に宇宙的とでもいった多元的な世界なのだ。
 私は、モーツァルトの晩年の作品の全部が傑作かどうか、知らない。(中略)。しかし、その中には、『魔笛』や『レクイエム』のような記念碑的大作とはまたちがった、もっと比較的めだたないでいて、彼の天才的本質、つまりは《音楽》の不滅性を証明しているようなものがある。私のいうのは、『弦楽三重奏のためのディヴェルティメント変ホ長調 K563』のことである。これは彼のかいた最後の《ディヴェルティメント》である。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3本の弦楽器で奏されるこの世界は、遊戯のうちにある清潔さ、日常的なものの不滅化の象徴としての音楽の本質の現存である。(中略)。
 弦楽器の三重奏は、ベートーヴェンその他もかいているが、それはもっと明るい、屈託のないセレナーデ的なものになっている。モーツァルトのこの作品に近いのは、むしろ、シェーンベルクが晩年にかいた三重奏かもしれない。シェーンベルクは、大病の結果、心臓の機能が停止して、一時完全に仮死状態に陥ったのち、また現世にもどってきた。彼の唯一の弦楽三重奏はそのあとでかかれたのである。」(P154〜155)
さすがに慧眼であり、名評論だと思う(余談だが、ぼくは吉田先生以上の音楽評論を書く人を見たことがない)。このディヴェルティメントK563は、全6楽章からなり、演奏時間も約50分近い大作である。各楽章は、アレグロ―アダージョ―メヌエット―アンダンテ―メヌエット―アレグロと続く。しかし聴き手は聴いている間、ここはアンダンテで、ここはメヌエットで…などと意識しないのではないだろうか。上記の吉田先生の文章で示唆されているように、この曲で描かれているのは彼岸の世界である。いろいろな花が咲き乱れる楽園である。単純に明るいではなく、「遊戯のうちにある清潔さ、日常的なものの不滅化」を表しているのだと思う。なかでも第4楽章から第6楽章にかけての流れはまさに絶妙、神業である。

クレーメル、カシュカシアン、ヨーヨー・マの演奏は、いかにも大家がアンサンブルを楽しんでいるという風情で、好感の持てるものだ。チェロが、他の2人と同等かそれ以上に自己主張をしているのはさすがである。

 

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2007/05/19 06:40

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
 こんにちは。
 「LP300選」は、初めて見た時、バッハ以前に半分くらいページをさいていたので、びっくりしてしまいました。
 昔の古楽の本は、今からすれば、けっこうおかしなことが書かれている場合が多いですが、この本は、(おそらく直感的に)ポイントがしっかり押さえてあり、さすがだな、と感心してしまいます。

 ただ、文章の力が強すぎて、聴く前から、曲のイメージが固まってしまうので、ちょっと困ってしまいますね。(笑)

 と、いうわけで、この本は愛読してましたし、この曲も以前聴いたことがあるはずですが、残念ながらほとんど記憶にありません。
 ただ、ここまで書いてある以上、たいへんな名曲なのは、100%まちがいないでしょうから、(笑)
 とりあえず最優先で聴いてみたいと思います。
Nora
2007/05/10 16:11
Noraさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

私は最近の音楽評論はあまり好きになれないのですが、
昔から吉田秀和先生と故・志鳥栄八郎先生は例外的に好きで
います。吉田先生の「LP300選」は最初に出版されたのが
昭和36年と半世紀近く前なので、今読むと違和感を感じる点
は少なくありません。また現在は穏やかな論調の吉田先生が、
若い頃は随分過激なことを言っておられたことが分かって、
驚くこともあります。しかしさすがに、本質的なことはぴし
っと押さえられていて感心させられます。
私は若い頃、LP(当時はCDはまだ存在していませんでし
た)を買う際に大いに参考にさせていただきました。余談で
すが当時のLPは値段が高く、学生の身分では買う際に慎重
にならざるを得なかったんですよ(笑)

アルトゥール
2007/05/10 20:06
 アルトゥールさん、今晩は。懐かしいディヴェルティメントの書き込みを見たものですから・・・私も同じ盤・・・といってもちょっと時代が違うみたいです。表紙もいくらか違います。1985、1987年の録音盤です。私の盤がちょっと遅いですね。クレーメル、カシュアシアン、マ、フィリップス の盤で 「アダージョとフーガ ハ短調」との並盤です。購入したのは91’6月です。アルトゥールさんの記事に触発され何年振りかで、CDを取り出して聴いております。モーツァルト のディベルティメントは最高ですね。心が癒されます。いや・・・モーツァルトの全ての旋律にです。仰るように ベートヴェン や シューベルト の三重奏もモーツァルト と違った楽聖の生み出す叙情の流れに共感を覚えます。懐かしい旋律に出会ったものですから・・・失礼致しました。
my favorite stories
2007/05/11 19:41
my favorite storiesさん、コメントを有難うございます。
私の持っているものも「アダージョとフーガ」との併録な
ので、同一の録音だろうと思います。私がこのCDを買っ
たのはたしか90年代末で、それまではカントロフ、メン
デルスゾーン、藤原真理の演奏で聞いていました。

モーツァルトは仰るように本当に心が癒されます。それば
かりでなく、これが私が変なのかもしれないのですが、ど
の曲でも、何回聴いてもそのたびに新鮮さを感じます。
ただベートーヴェンやシューベルトにもそれなりに素晴ら
しい個性があり、その時の気分に応じて各々の作曲家の名
曲を楽しめるのは、我々音楽ファンの特権であり贅沢だろ
うと思います。
アルトゥール
2007/05/11 22:07
こんにちは。
私もこの曲、大好きです。
クレーメル/カシュカシアン/マの演奏は、
3人の名手が、互いに一歩もひかずに
バトルを繰り広げているみたいなところもあって、
非常にスリリングです。

個人的にはラルキブデッリの演奏が
優雅で浮遊感があって一番好きです。
木曽のあばら屋
URL
2007/05/12 16:36
木曽のあばら屋さん、コメント有難うござました。
今はハイドン、モーツァルト辺りまでは、現代楽器による
演奏だけでなく、オリジナル楽器でも聴いてみたい気がし
ますね。私もクレーメル盤のほか、もう1種類買うとした
らラルキブデッリだと思っていました。
ただ今年子供が小6になってから、塾にお金がかかるよう
になったため小遣いを減らされ、CDの購入激減を余儀な
くされているんですよ(苦笑)。
アルトゥール
2007/05/12 19:01

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